人生の終わりばかり考えている

宿。(やどまる)

人生の終わりばかり考えている

初めから、死ぬことは考えない

だけど、死ぬことが決まって生まれてくる

いつからか、死ぬことを考えるようになって

まだ、しばらく踏ん張ってみるけど

ヒビの入った心はそこから腐りはじめ

段々、生まれたことに恨みを持つ自分が育っていく

他人と比べてまだマシなんて誤魔化しで

暗い感情は再び襲いかかってくる


そのうち、人生に良いことが起きる

だけど、そこに保証は一つもない

世の中は、気休めの言葉ばかり

いつから笑顔が胡散臭くなるのだろう

何もかもが作りものに見えてしまう

他人も自分も疑うことが当たり前になっていく


今まで、何とか耐えてきたけれど

もう、楽になりたいとしか思えない

だけど死にたいと叫ぶ勇気もなく

無言のままで消えていくのだろう

人生の終わりばかり考えている

きっと私はこういう運命の元に生まれたのだ


そんな運命を受け入れてみると、ふと気づくことがある

からっぽな心でも、荒んだ感情が入ってきて

それさえ心を満たすエネルギーとなっている

からっぽな心が、暗い気持ちのおかげで満たされていく

死にたいという気持ちが、自分を支える気持ちになっている

からっぽな心なのに、沈みきった重たい気持ちだけは

自分の気持ちとして確かに感じられる


ああ、もしかしたらまだやれるのかもしれない

心は闇を感じられるくらいには生きている

前を向いて歩けなくても、後ろを向いて歩くことはできる

プラスじゃなくても、マイナスだってエネルギーなんだ

こういうのも自分らしさと言うのだろうか

だから私は人生の終わりばかり考えていることも悪くないと思うようになって

いつの間にか、暗闇の中で静かに立てるようになった自分を見つけた


そして初めて知った。立っていられることの力強さを

立っているだけで十分なのだ

立つことは真っ暗闇でもできるのだ


ようやく何かがわかった気がした

このために人生の終わりばかり考えていたのだろうか?

私は立ち方を知りたかったのかもしれない


光がなくても立てる自分に、私は出会いたかったのだ



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