第二章 プロポーズ大作戦!?

第二章1『エンカウント』

  

  デスクに向かい書類を作る。そしてできた書類を上司に確認してもらう、ダメならもう一度だ。そう、もう一度。

 

 天野は今、かなり焦っている。

 

 実は天野、なかなかのゲーム好きなのだが、今日は大好きなゲームの新作の発売日なのだ。いつもなら定時には仕事を終え、することを済ませてすぐに寝る。そして朝五時には起きる、今日もそうしたい。そうしたいのだが……

 

 「沢田さん、これでどうですか?」

 

 「…………さっきよりもマシになったがやはりまだ手直しが必要だな。もっとここを————」

 

 なんと定時を過ぎても資料がうまく作れず絶賛居残り中なのだ。

 

 天野は朝の弱さに絶対の自信を持っている。夜遅くまで起きていて五時など起きれるはずがないと確信しているのだ。

 

 もう一度言おう。天野は焦っている。猛烈に焦っているのだ。

 

 時間は今、七時四十六分、最低でも8時間睡眠は取りたいのだが、会社から家までは大体三十分はかかる。つまり無理ゲーなのだ。

 

 そんな絶望を味わっていると……

 

 「明日ってあのゲームの発売日じゃ無いの?大丈夫?」

 

 隣で資料を片付けていた佐々木が声をかけてきた。

 

 「いや、全然大丈夫じゃ無い、ヤバイ、こりゃ無理だ…」

 

 「どこでつまずいてるの?」

 

 そう言うと佐々木は天野が取り組んでいる資料を読み始めた。

 

 「あー、なるほどね、ちょっと手加えて良い?」

 

 「別に良いけど、ふざけてる場合じゃ無いぞ。」

 

 「大丈夫だって——————」

 

 ————————————

 

 「はい、これ沢田さんに渡してみて。」

 

 これで通ったら苦労しないよ。

 

 そう思いながら沢田に渡してみる。時刻は七時五十四分だ。

 

 「うん、これで良いぞ。いきなり良くなったな。どうしてだ?」

 

 「いえ…少しアドバイスしてもらっただけです。」

 

 マジか…

 

 佐々木のやつ、やれば出来るY. D K. なんだな。今度奢ろう。

 

 そのあと天野は(体感)光の速度で会社を出た。家に着いたのは八時二十分、ギリギリだ。天野は夕飯と風呂を最短で済ませ、八時四十分に眠りについた。多分これは天野の人生ベストタイムだろう。

 

 次の日しっかりと五時に起きることが出来た天野は身支度を済ませ、家の近くの店へと向かった。

 

 そこは、天野がゲームの新作を買うときにお世話になっている店なのだが、すぐ近くに少し大きな公園がある。

 

 並びに行く時にいつも公園を突っ切るのだが、いつも朝早くから老夫婦が、仲睦まじく散歩している。

 

 今日も同じだった。犬の散歩がてら二人で楽しく話しながらウォーキング。

 

 天野は店前に既に出来ていた列に並びながらそんな姿に憧れていた。

 

 店はいつも通り七時半に開き、無事ゲームは入手できた。本当は今からでも家に帰ってプレイしたいのだが、あいにく今日は金曜日。仕方がない、仕事が終わったら速攻でしよう。天野は鞄にソフトをしまい、会社に向かった。

 

 この日の仕事は実に簡単だった。

 昨日仕上げた資料の印刷、見回りなどだ。佐々木に飲みに行かないか誘われたが今日だけはだめだ。

 

 すまない、恩人よ、また今度、必ずだ。

 

 天野は速攻で家に帰る。昨日のベストタイムに迫るペースでだ。

 

 しかし、天野もまさかその途中で自殺しようとしてる人を見つけるとは予想は出来なかった。

 

 

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