落ちこぼれの無能だと貴族家から追放された俺が、外れスキル【キメラ作成】を極めて英雄になるまで
狐火いりす@『不知火の炎鳥転生』商業化!
第1章 英雄の卵
第1話 『祝福の儀』
「クロム、これが最後のチャンスということを分かっているのだろうな? これ以上、後はないと思え」
ガタゴトと揺られる馬車の中。
黒髪黒目の少年──クロムに向かって、重苦しい様子で言い放つ。
「……はい、父上。絶対に強いスキルを手に入れてみせます」
「兄上なら絶対にとんでもないスキルを獲得できますよ」
「ありがとな、ダーク」
クロムは励ましてくれた弟のダークに礼を言う。
それから、静かにうつむいた。
クロムたちが向かっているのは教会だ。
神からスキルを授かる神聖な儀式、『祝福の儀』を行うためである。
もらえるスキルの種類は様々だが、中でもエキストラスキルは別格だ。
通常のスキルよりもはるかに性能が高い。
ハイリッヒ侯爵家の現当主である父──アイザックは、爵位を上げることを目標としている。
つまり、エキストラスキルは授かって当たり前。
問題はエキストラスキルの中でも上位に相当するスキルを授かるかどうかなのだ。
ダークなら……優秀な弟なら、間違いなく強力なスキルを授かることができるだろう。
「着いたぞ」
馬車が止まる。
クロムが外を見ると、緊張した様子の少年少女たちが教会に入っていくのが目に映った。
「ハイリッヒ侯爵家に相応しいスキルを手に入れろ。それ以外は許されない」
「……はい。絶対に父上の期待に応えてみせます」
「もちろんですよ、父上」
クロムは重い足取りで父の後を追う。
教会の中には、すでにたくさんの子供たちがいた。
一人ずつ神官の前に行っては、授かったスキルを告げられていく。
「エキストラスキル【アイテムボックス】!」
「うおおおッ!! 俺は商人になって楽して稼ぐぞぉぉおッ!!!」
エキストラスキルを授かった少年が叫ぶ。
高確率でエキストラスキルを授かる貴族とは違って、平民がエキストラスキルを授かることは稀だからだ。
「通常スキル【身体強化】」
「通常スキル【テイム】」
「通常スキル【バーサーク】」
列に並んで順番を待っていると、ダークの番がやってきた。
「ようやくか」
ダークは軽やかな足取りで神官のもとまで歩いていく。
「おお……!」
【鑑定】の魔道具を使用した神官が、わずかに目を見開いた。
「……エキストラスキル【剣聖】!」
その瞬間、教会の中がワッと沸く。
【剣聖】。
それはエキストラスキルの中でもかなりの上位に位置するスキルだ。
ちなみに神官が告げるのは一番強いスキルただ一つだけだ。
他にもスキルを授かった場合は、後でスキルプレートと呼ばれる使用可能なスキルが記された板をもらうことができる。
【剣聖】を授かったダークなら、他にも強力なスキルを授かっている可能性が高い。
「ふむ。私と同じ【剣聖】か。優秀なダークに相応しいスキルだな」
ダークが【剣聖】を授かったと知っても、アイザックは特に驚かない。
「次は兄上の番ですよ」
「あ、ああ……。行ってくる」
クロムは暗い顔で神官のもとに向かう。
顔が強張る。
心臓の鼓動が早くなる。
神官から告げられたのは──。
「通常スキル【キメラ作成】」
……通常スキル?
クロムは頭が真っ白になる。
「エキストラスキルは!? 他のスキルは!?」
「……残念ながら、君が授かったのは【キメラ作成】だけだ」
クロムはがくりと膝をついた。
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