第61話
東青梅駅の周辺には、マンションが数軒立ち並ぶ程度で都心と比較すればかなり見通しの良い地域だった。
「都心と違って、モンスターが来てるのがわかるから戦いやすいよね」
討伐を進めて20分が経った頃、新庄は呑気にそんなことを言っていた。
「まあな。都心のときのように退路を確保しながら討伐をしないといけないわけでもないからな。その辺はまだ討伐は楽かもしれない」
「ところで、このまま東に向かうんだっけ?」
「いや、実はひとつ考えがあるんだよ。ほら、八王子市って知ってるか?あそこって商業地区として結構栄えてるらしいんだよ。隊員に少し聞いた話だけどな。近日中には青梅市を『解放』して、ここから南の八王子に目標をうつしたい」
八王子市は東京西地区でも比較的栄えた地域だ。俺が八王子市を目標に切り替えたのはひとつ理由がある。食料不足の懸念だ。
今日も行った食品会社の大型倉庫は、毎日通えばすぐに在庫が無くなってしまうはずだ。
青梅市の中にも、食品を扱っている会社はそれなりにあるらしいが、今行っている大型倉庫のようなものは持っていないらしい。
それならば、大型倉庫が複雑あるという八王子市で食料を調達し、それと並行して討伐も進めていけたらいいんじゃないかと考えた。
「それなら早く青梅市は『解放』しなくちゃね!」
「近々最初に討伐をしていた場所にも雑草や木が生えてくるはずだ。少しずつ、安全地帯と呼ばれる地域も増やせると良いな」
俺たちは話をそこで切り上げ、討伐速度を上げるように全力で討伐を行なった。
◇
2時間が経過した頃。
俺たちは東青梅駅から東側のモンスターを討伐していたが、なぜかモンスターの数がいきなり減り出したように感じた。
あまりにも余裕のある討伐になったことに違和感を覚え、俺は周辺の地図をスマートフォンで調べることにした。
「……そういうことかよ」
「省吾、何かあったの?」
「いや、あまりにもモンスターが少なくなってきたから地図を調べたんだよ」
「ああ、言われてみればそうかも……」
新庄は俺に言われるまでは気がついていなかったようだが、話を聞くと思い当たる節もあったようだ。
「理由がわかったよ。この先、農村地帯なんだよ。自然が多いと判断されたんだろう。自然が多いところにはモンスターがそれほど発生しないみたいだからな」
「なるほど、そういうことか……目的地を変更しないといけないよね?どうする?」
「このまま南に進路を変えて羽村市を目指す。八王子を目指すにも、その辺を通ることになるからな。みんな!集まってくれ!」
少なくなってきたモンスターの討伐を終えたところで、俺は隊員達を急遽集めることにした。
「この先農村地帯が広がっていることがわかった。全くモンスターがいないというわけじゃないと思うが、俺たちはモンスターが多い地域に行くべきだと考えた。このまま南下して羽村市を目指すことにする。南に進むに従って、またモンスターが増えていく可能性があるから、気をつけよう。すぐにトラックに乗り込んでくれ」
俺は隊員達に進路を変更する経緯を説明し、俺たちは大至急移動することになった。
東青梅からまっすぐ東に向かっていたから、少し倒せなかったモンスターもいるかもしれないが……それは明日以降に解決しよう。
こうして、俺たちの乗るトラックは南の羽村市に向かってかなりのスピードで走っていた。
しばらく走っていると、再びモンスターが多くうろつく地域に入ったようなので、新庄はトラックを停めた。
俺たちはすぐに荷台から飛び降り、早速モンスター討伐を再開した。
やはり、先ほどモンスターが少なかったのは農村地帯が近かったせいなのだろうか?
ここには先ほどの5倍の数のモンスターがいるように見えた。
「さっさと植物になってくれ」
俺はそう呟き、次々とモンスターを討伐していった。
◇
日が暮れる頃。
俺たちは羽村市になんとか入ることができた。しかし、これ以上討伐を続けて暗い中帰るのも嫌なので、すぐに隊員達に撤退指示を出した。
俺たちは急いでトラックに乗り込み、新庄は奥多摩へ向けてアクセルを踏み込んだ。
「ふう……やっぱりこっちはモンスターが多いな」
「東青梅の東側にあんな農園地帯が広がっているなんて知りませんでした。私も東京で暮らしていましたが、この辺まで遊びにきたこともないですし」
東京で生活していた岡ですら知らない地域だったそうだ。
「まあ、若干予定はずれたが、そう簡単に予定通りことが進むわけはないんだ。明日は東青梅に残してしまったモンスターを討伐してもう一度羽村市に来よう。そろそろ青梅駅の周りも緑で溢れる頃だと思うんだがな」
「はやくあの辺も『解放』できるといいですね」
こうして、俺たちの討伐は今日もそれなりに順調に進んだ。『解放』できた街が増えるのもこの近日中かもしれないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます