第60話

 食品会社の倉庫へ無事到着し、食料をトラックに積み込んでいた俺たちだったが、ひとつだけ考慮していない問題に直面していた。


「そりゃトラックが増えれば積み込みの時間も増えるわな」


 てっきり忘れていたが、台数が増えるということはそれだけ食料をたくさん積まなければならないということだ。

 隊員もそんなに多くないので、積み込みにかなりの時間がかかりそうだった。


「省吾……これは誤算だったね」


「これはまったく頭になかった。悪いな、討伐できる時間を増やすことだけを考えてしまった」


「1台で運搬するよりかは遥かに効率的さ。ほら、僕たちも積み込み手伝って早く帰ろう」


 それから1時間ほどかけて、すべてのトラックの荷台が満載になるまで積み込み、俺たちは大至急、奥多摩へ戻ることにした。




 奥多摩へ戻る道中、何度か大型モンスターとの戦闘があったが、モンスターを誘導することも慣れ、スムーズに戻ることができた。


 奥多摩へついた俺たちは早速運んできた食料を配給所に下ろした。

 食料を下ろすのは、自衛隊員が手伝ってくれたこともあり、積み込む時間よりは早く終えることができた。


「それにしてもすごい量ですね……!」


 自衛隊員の1人が俺たちが運んできた食料を見てかなり驚いた様子でそう言った。


「毎日これくらいの量を持って来れたらいいんですけど……そのうち今行っている食品会社の倉庫にある食料も底をつくでしょう。早めに次の食料の当てを探さないといけませんね」


「そう……ですよね。モンスターに襲われて亡くなった方が多数いると聞きましたが、それでもここには何百万人もの人々が生活していますし……」


 俺たちが持ってきた食料も正確な人数は分からないが、ここにいる人々1日分の食料に満たないかもしれない。


「とりあえず俺たちは少し休憩を挟んで討伐に向かいます。配給の方はよろしくお願いしますね」


 俺はそう言って配給所を離れて拠点へと戻った。


 少し昼食には早い時間だったが、なるべく早く討伐に向かうために前倒しで昼食を摂ることにした。


 隊員達は喉が詰まるんじゃないかという速度でご飯をかきこみ、すぐに討伐の準備を始めてしまった。


「……俺も早く食わなきゃいけないじゃねえかよ」


 早食いは体に悪いんだぞ?

 まあ、時間は限られているのに違いはないので、俺も急いで昼食をかきこみ、討伐の準備に入ることにした。


「なんか大変そうね」


 俺たちが急いで準備している様子を見た恵美は他人事のようにそう言った。


「飯を食う時間もゆっくり取れないよ。なるべく早く近くの街を『解放』しないといけないからな。今日も留守番頼んだぞ。夕方にはMDUの物資が届くはずだからな」


「まかせて!気をつけて行ってきなさいよ?」


「ああ、分かってるよ。みんな!そろそろ行くぞ!」


 隊員達にそう伝えて、俺たちは幌付きトラックへ乗り込んだ。

 今回は討伐だけなので、1台で街へ向かう。


「省吾、今日はこの前撤退した東青梅から?」


「ああ、とりあえずそこに向かってくれ。途中のモンスターもなるべく倒していこう」


 俺は新庄にそう伝えると、トラックはゆっくりと進み出した。


 今日も日が暮れるまで討伐を続けるつもりだ。せめて奥多摩から東青梅駅周辺までは『解放』したいところだが、それが何日かかるかはわからなかった。手前の青梅駅は元々のモンスターもそんなに多くは無かったから、意外と『解放』の日も近いかもしれないな。




 東青梅へ向かう途中。

 昨日討伐を行った道を外れて、違う路線で東青梅へ向かうことになった。

 討伐できなかったモンスターがまだたくさんいるかもしれないと考えたからだ。

 それほど数は多くなかったが、やはり昨日討伐しきれなかった大型モンスターもいた。

 

 こうやってしらみ潰しにモンスターを討伐していくことができれば、この辺りも早く『解放』できるのだろうか?

   

 正直、中野区が『解放』できたのも、モンスターの数が多くてまた一面ジャングルのように木々が生い茂る状態になったからなのだろうか?それともその地域ごとによってあらかじめ討伐数が決められているのだろうか?


「ルーチェのやつ、自分の都合のいい時にしか俺を呼び出さないからな……」

 

 俺も普段疑問に思ったことを書きたいと思うのだが、接触はいつも向かうからだ。俺にも連絡手段のようなものがあればいいんだけどな。

 

「隊長、そろそろ東青梅です。モンスターも段々増えてきています」


 俺は色々考えていると、岡に目的地が近づいていることを知らされた。


「よし、それじゃそろそろ降りる準備でも始めるか。今日も日が暮れるまでの討伐だが、気を抜くなよ?」


「分かってますって。1体でも多く狩らないといけないのに気なんて抜けませんよ……」


 岡はため息混じりにそう言った。 

 まあ、気を抜いている暇があるならモンスターを1体でも多く討伐しろと日頃からうるさく言っているので、その辺は俺が言わなくても大丈夫だろうが……口うるさい姑のように感じるのかね?


 東青梅駅周辺に近づくと、昨日と変わらないほどのモンスターが溢れていた。


 昨日はここで討伐を切り上げて撤退したので、当然と言えば当然か。


「みんな!装備を確認次第すぐ降りろ!今日も1体でも多くモンスターを討伐しよう!」


「「了解!!」」


 俺の戦闘開始の掛け声とともに、隊員達は幌付きトラックを降りモンスターへと向かって行った。


 新宿区に比べたら大したことはないが、それでもかなりの大型モンスターが駅周辺に集まっていた。


 こうして俺たちは、東青梅周辺のモンスター討伐に取り掛かったのだった。

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