第47話
「疲れたあああああああ」
俺は自分の部屋のベッドに飛び込み、天を仰いでそう言った。
ドラゴンを倒した後、中野区近辺の大型モンスターを倒した俺たちは1人も欠けることもなく、駐屯地に戻ってくることができた。
やはり、大型モンスターの戦闘力は脅威的で、数人の隊員が怪我を負ってしまったがいずれもかすり傷などの軽傷だった。
無事帰ってこれた安心感とともに今日一日討伐し続けた疲労がどっと押し寄せてきて、今に至る。
「今日何体大型モンスターを倒したっけ?」
「途中から数えていない。最初のドラゴンが一番厄介だったし、他のモンスターはただでかいだけでそれほど苦戦はしなかったからな。それでもその辺のモンスターよりは格段に強かったよな……」
「そうだよね……今日出たティラノサウルスくらいであれば安定して討伐できそうだよね?」
新庄の言う通り、最初のドラゴンを除けば安定して討伐できそうな気はしていた。時間は少しかかるが、やはり弓部隊が遠くから先制攻撃できるのはかなり討伐が楽になった。
ちなみに今日討伐したモンスターはドラゴンに始まり、人型に牛の頭をしたミノタウロス、5メートルほどの黒いユニコーンに大きな騎士が乗ったユニコーンナイトのようなものまで、多種多様なモンスターが発生した。
これがルーチェの趣向なのか他の神の趣向なのかは全くわからないが。
「省吾、夕飯どうする?」
「もちろん食うよ。食わないと疲れも取れないだろうし。その前に本部に報告の電話をさせてくれ」
そうして俺は本部に電話をかけた。
いつもの女性が出てくれたので、本部長に代わってもらう。
「もしもし、笹森です。今日はお疲れ様でした」
「お疲れ様です。今日の討伐内容の報告ですが……」
俺は覚えているだけの大型モンスターの特徴や出現場所について報告した。
本部長はその内容をメモに取っているようで少しずつ確認しながらの電話となった。
「ありがとうございます。現場からのデータはこの先かなり重要になりますからね。それよりも1つ報告がありまして、海外でもMDUのような部隊が編成されつつあるそうです。やはりスキルアップに気がついたのは日本だけではなかったようですね」
「そうですか。まあ世界中でも助けを求める人がいますし、この大厄災が早く終わるに越したことはありません」
早く終わらせないと人類の数がどんどん減ってしまうかもしれないからな。
「それと残念な報告ですが、日本でも大型モンスターに襲われ命を落とした一般人も出てしまったそうです。我々MDUもメディアの対応に追われていますが、そもそも我々がいなければ日本はとっくに滅んでいるのは国民全員が分かりきっています。メディア関係にはこちらも強気に出られるのでその辺は任せておいてくださいね。明日からも討伐の方、引き続きよろしくお願いします。何か要望があれば気軽に相談してください」
そして本部長は電話を切った。
本部の方も色々バタバタしてそうだな。
「じゃあ飯食いに行くか」
俺は新庄に声をかけ食堂に向かった。
食堂では他の隊員も夕食を食べていたが、疲れているのかあまり箸が進んでいなかった。
それはもちろん俺と新庄も同じで、こんなに疲れたのは前の駐屯地で行なった大規模討伐以来だった。
俺は無理やり夕食を喉に通すようにして食べ、あとはゼリー飲料で腹をもたせることにした。
夕食が終わり、俺と新庄は武器科を訪れることにした。今日の討伐でどれくらい武器が消耗してるか知りたかった。
「入るぞ……」
「あら2人とも、お疲れ様……ってやっぱり疲れているわね。ご飯はしっかり食べたの?」
「ああ、無理やりにでも食っとかないと明日持たないからな。それよりも武器の具合はどうだ?」
「消耗はやっぱりいつもより激しい感じはあるけど、すぐダメになるほどじゃないわよ?ただ、刀には刃こぼれが出てるものもあったわ。一体あれは何を斬ろうとしたの?」
意外と消耗が激しくないと聞いて安心した。それならば今日くらいの討伐を維持できるかもしれないな。しかし刀の刃こぼれか。
「実は最初に戦ったのがドラゴンだったんだよ。鱗が金属みたいに硬くて攻撃が弾かれちゃってさ」
新庄が恵美にドラゴンのことを説明した。
「ド、ドラゴン!?そんな物騒なモンスターまで出たのに、みんな生きて帰ってこれたの!?あんたたち人間じゃないわね……」
「恵美の言う通り、もう人間はやめてるからな。とりあえず俺たちは早めに休むことにするよ。武器の手入れよろしくな。おやすみ」
こうして俺たちは部屋に戻ってゆっくり休むことにした。
ベッドに横になって目を瞑るとあっという間に睡魔が襲ってきて、その日は泥のように眠ってしまった。
◇
翌日の朝8時。
運動場では討伐の準備が進んでいた。
隊員たちも昨日は早く休めたのか、意外とスッキリした顔をして運動場に出てきた。
準備が終わった頃に俺は隊員たちを呼び集めた。
「MDUから今日の討伐依頼が届いた。今日は昨日討伐した中野区近辺の様子を確認しつつ、そのまま新宿区の大型モンスターの討伐に向かう。昨日のドラゴンのようにこちらの攻撃が通りにくい敵もまだいると思っていた方がいいだろう。昨日怪我をした隊員も軽い怪我で済んだが、今後はどうなるか正直わからない。今日も隊員が1人も欠ける事なく無事に帰ってこれるようにみんなで支え合おう。準備ができたらトラックに乗り込んでくれ」
俺がそう言った後、隊員たちは装備確認を十分にして、トラックに乗り込んだ。
そうして、俺たちはまずは最初の目的地、中野区に向かってトラックを走らせた。
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