ただいま落下中

サムライ・ビジョン

 

 私のほかには、何人かの男女がいる。

年齢も服装もバラバラだ。

青空の中、雲をいくつもすり抜けながら、私たちは猛スピードで落ちていく。

 これだけ落ちているにもかかわらず、未だに地面が見えてこない。学生の私は立ったまま落ちている。


 ふと、遠くの男がパラシュートを開いた。私たちを置き去りにし、ゆっくりと降りてくるのが上空に見える。男のパラシュートには「一次試験合格」と書いてある。


 別の男に目をやると、ちょうど白い羽根が生えたところであった。生えたばかりの羽根に戸惑っているようだが、それでも自分なりに羽ばたいているように見える。


 今度はすぐ近くの女に目を向けてみた。彼女は背中に何かを背負っており、スイッチを入れた途端、空高く飛んでいった。


 そんな人々を見かねてか、とある男は自分にも何かないかと探していたようで、遠くで落ちている大きな箱を見つけた。だが、彼が箱へと近づこうとしたところ、どこからともなく現れた岩山に次々とぶつかり、やがて見えなくなった。


 世の中には嫌な人もいるようで、下の方にいる誰かがミサイルを飛ばしてきた。しかしそれは、羽根にもパラシュートにも、もちろん空高く飛んだ人にも届かなかった。その人はミサイルを飛ばした反動で、さらにスピードをあげて落ちていった。


 そして、私のすぐ隣にいるのは謎の女である。その女は落ちているにも関わらず、焦りもせずあくびをしている。いつになったら焦りを見せるのかと思いきや、その女の落下はふと緩やかになり、やがて浮いていった。何が起きているのかと彼女を見上げるが、最後まで浮いている仕組みは分からなかった。




 周りの人々に気を取られ、心配をしたり、呆れたりしていたが、そのような余裕は今の私にはないのである。落下が始まってしばらく経つが、未だに何も手にしていない。空を飛ぶ道具も、スピードを落とす方法も。手元にはないし、どうすれば手に入るのかもよく分からない。

 それでも私は、なんとかなるだろうという自信だけは誰にも負けない。いつか空を飛べる日がきっと来る。

…そう自分に言い聞かせ、私はひと眠りすることにした。




 僕は今しがた、傘を開いてなんとか緩やかになったところだが…可哀想なものだ。




どうして地面に叩きつけられるまで、あの子は何もしなかったんだ。

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