君とカミサマに戻る為に。

彩彩符

序章 ✧ 堕落少女の ユメ と キオク

 何も無い、真っ白な地面だけが続く場所が 広がる場所に、少女は立っていた。

何処を見ても白しかないこの空間は、何故だか少女を蔑んでいるように感じた。

誰が見ても異質な空間。しかし、少女はこの状況が当たり前であるかのように立っている。



「やあ。気分はどうかな、夜々。」



ふと。少女以外の声が響く。

どのような原理かは分からないが、この広い空間で響く誰かの声につられ、今まで少しも動くことのなかった少女が顔を上げる。



「何故、私にそれを聞くの。貴方には必要ほない情報じゃない。」


「ふふ、確かにそうだね。」



誰に何も悟らせまいというような貼り付の笑顔と無理矢理感情を込めたような声。聞くだけでゾッとしてしまう。

そんな声を発している人物は、真顔になってから少し考えたような素振りをした後、直ぐに笑顔に戻る。



「なら、重要な事を聞いておこうか。何故禁忌を犯したんだ、夜々。」


「知らない。あんな事が禁忌だなんて馬鹿げてる。ねえカミサマ、何故禁忌を犯してはならないの。」


「それは言えないね。でも夜々、キミは堕としたくはなかったよ。」


「そう。」



『カミサマ』と呼ばれた人物の顔は後光の様なもので見にくい。オマケに、声が少し胡散臭い。

そんな人物からの言葉に、表情の変化のない顔と抑揚のない声で淡々と返しているのは、間違いなくそこに立っていた少女であった。

カミサマが言葉を発する度、パラパラと小さな音を鳴らしながら地面が崩れ落ちていく。



「それじゃあ、次は彼の所へ行って堕としてくるよ。バイバイ、夜々。」


「っ、待って、それは!」



今まで抵抗を見せなかった少女が声を荒らげたと同時に、床が全て崩れ落ちた。

同じ空間に居たカミサマは消え、少女だけが、必死に手を伸ばしながら暗闇の底へと堕ちていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君とカミサマに戻る為に。 彩彩符 @Itigo_mai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ