バレンタインなんて……
咲春藤華
バレンタインなんて……
バレンタインなんて来なくてよかった……。
来なければよかった……。
前日まではあんなに楽しみにしてたのに……。
なんで……?
バレンタイン当日、彼女からチョコを渡されたながら……
僕は振られた。
彼女とは付き合って1年ほど。
僕はこの恋に真剣だったし、彼女もそうだったと思いたい。
彼女と過ごす日々は楽しかったし、一緒にいれるだけで幸せだった……。
デートにも行ったし、手を繋いだり、キスをしたりもした……。
テスト前は一緒に頑張って勉強したし、テストの後は一緒にゲームをして、映画を観てはしゃいでいた。
クリスマスだってプレゼント交換したし、正月には一緒に初詣に行った。今年も一緒に過ごせますようにと願いながら……。
けど、よく考えるといつも彼女と一緒に過ごしていた気がする。
一緒にいることは幸せだった。
隣に君がいないのは寂しかった。
君と離れるのは怖かった。
君がほかのところに行ってしまいそうで……。
君は僕の太陽だ。
僕の名前に『陽』の字は入っているが、いつも『陰』にいた。
取り柄は無いし、活躍もできない。したいことは無いし、できることも少ない。
けど、そんな僕を君は……。
だから……。
君の輝きに僕は助けられていた。
ああ……
僕は君に依存、し過ぎてしまったのかな……。
うんざりだったのかな……。
君のおくれる楽しい日々だったものを、僕が暗くしてしまったのかな……。
君から離れるのは寂しいし、悲しいし、つらいし……。
君が誰かのもとへ行ってしまったら、僕は落ち込むだろうし、泣くだろう。
『でも幸せならOKです』
どこで見かけた言葉だっただろうか。
ちらっと見かけただけだが、妙に心に残る。
この言葉を言えるのは凄いなぁ、と感心したんだったか……。
こんな言葉を言えるほど僕の心が強ければ……。
いや、言いたい。言えるようになりたい。
けど、僕の心がそれを言わせてくれないんだ……!!
僕が幸せにしたい!!
彼女を幸せにできるのは、僕だけだ!!
僕が……
振られてから3日。
今まで毎日していた連絡も途切れている。
彼女に伝えたい。
僕がどれだけ君のことを……。
『好きです。
もう一度、付き合ってください。
お願いします 』
悔しいなぁ……。
自分の気持ちもまともに伝えきれないだなんて……。
ピロンッ
既読、返信早いなぁ。
『チョコまだ食べてないの?!
手作りだから早く食べてほしいな』
チョコ?
振られたショックで何か口に入れたい気分じゃないし、彼女からの最後のプレゼントをそんなすぐに消費できるわけないじゃないか。
彼女からのチョコは赤いハート型の箱に入っていて可愛くリボンで結んである。
もったいないな。
食べづらい。
箱を開ける。
ほんとに手作りなんだ……。
チョコにクッキー、ちっちゃなパウンドケーキにマカロン。
全てハート型だ。きれい。
ああ、おいしい。
ほんとに手作りか疑うほどおいしい。
ははっ、涙が出てきた……。
悔しい悔しいなぁ。
チョコがしょっぱく感じないうちに早く食べよう……。
……あれ?
なにか底に紙がある。
何気なくひっくり返してみた。
!!!!!!
「はっ、、ははっ、、、あ、あ、あああああああああああああああ!!!!」
紙には
『恋は押し引きが大事だとアドバイスを受けたので、今回は引いてみました!!
私のこと、もっと好きになりました?』
「はははは! ち”か”う”よ”ぉぉぉ!! 間違ってるよ! 引きすぎだよぉ!
は、は、はははは!!!
よ”か”っ”た”ああぁぁぁぁ!!!
うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
思い出した。
彼女はバカだったのだ。
僕が思う以上にバカだったのだ。
こんなお菓子を作れるくらい、真面目で丁寧な人なのに。
どこか抜けてる気がする。
よかったぁぁぁ……ほんとによかった……。
『チョコありがとう! 美味しかったよ! 手作りだなんて思えないほどに!
それと、僕が勘違いしてただけだから、前の文は気にしなくていいよ!』
『おいしいかった??
上手にできたでしょ!!
それと、もっと私のこと好きになった?』
やっぱり、彼女は僕の太陽だ。
バレンタインなんて…… 咲春藤華 @2sakiha
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