第17章 夕焼け
夕日が赤く染める川面を眺めながら、二人は歩いている。
タカシはカバンを肩にかつぎながら、大きく伸びをした。
「うーん、やっぱ授業は疲れるなー。結局、夏休みは試合と練習ばっかしで、全然遊べなかったもんなー・・・・。」
ナツミは両手でカバンを持ちながら、顔を上げて言った。
「贅沢言わないの・・。全国大会ベスト8だもん、すごい事よ。」
そして又、少し背が伸びて逞しくなったタカシを、眩しそうに見つめた。
「ナツミ達だって、チアガールの全国大会、準優勝だろー。すげーよなぁ・・・・。この間、TVでやってたもんなー・・・・。」
「うふっ、そうね。ねえ、私・・・きれいだった?」
ナツミがのぞき込むように言う、とタカシは夕日程ではないが、顔を赤くして答えた。
「べ、別に・・・どうってことないよ。」
ナツミは少しムッとして、意地悪く言った。
「へーんだ、こんな時、タカシホなら優しく誉めてくれるわよー・・・・だ。」
「な、何だよー。俺だってなー・・・、ナツメなんか、すっごく優しくって、可愛かったぞー・・・・。」
「あっ、そー・・・?じゃー、今度はタカシが古代へ行っちゃえばー・・・・?」
二人は土手を下りてしばらく言い合いをしていたが、やがてどちらからともなく手を絡ませ草の上を歩いていた。
「ねえ・・・。」
ナツミが甘えるように言った。
「何だよ・・・?」
タカシが照れくさそうに答える。
潤んだ瞳で、ナツミが見つめてくる。
「あの二人・・・幸せになったかなぁ・・・・?」
ナツミの手の温もりが気持ちいい。
「ああ、あの本によると、雷の後ナツメは無事だったんだ・・・・。その事で返って、神の御加護がついたと思った大海人皇子軍は大勝利だったそうだし・・・・。ナツミだって、見たじゃないか? あの壁画の写真・・・・・。ナツミが戻ってくる前は、普通のかっこうだったんだぜ・・・・。」
そう言うと、二人はクスッと笑った。
「あー、そうね。そーいえば・・・ね?」
二人は寄り添うように歩きながら、夕日に向かって古代の二人を思い描いていた。
古代のナツメとタカシホは、仲良く壁画の中で幸せそうに寄り添っていた。
二人は「壬申の乱」の影の立て役者として、天武天皇から末長く大切にされたという。
壁画の中の二人の右手は・・・。
『Vサインのポーズ』をとっていた。
壬申の乱外伝(恋のタイム・スリップ)完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます