第23話 緊急依頼
「はぁ〜……やることないな……」
俺はソファに体重を預けながら、同じくだらけている三人に向かって言った。
なんで俺はこんなことしてるんだ?
俺が思う、生きる伝説はこんなことしないんだけどなぁ〜……。
「そうですねぇ〜」
「そうなのです……」
「暇ですね……」
三人は俺の意見に同意してため息をついた。
うん。暇だねぇ〜……。
こんな日々が続いたら俺はダメ人間になりそうだ。
「おい、お前たち。なんでギルドマスターである俺の部屋でくつろいでんだよ」
ギルドマスターは、なにか書類をかまいながら俺に向かって言ってきた。
何なんだこの人……。
「そりゃあ、ギルドマスターくんが全然依頼を受けさせてくれないからだよ」
「はっ! そりゃあお前はもう、天下のAランク冒険者様だ。前にみたいに薬草採取なんかしたら、他のやつらが萎縮して依頼を受けようとしなくなる。だから、仕方ないだろって何回言えば気が済むんだよ……」
はぁ〜……。
Aランク冒険者になって、生きる伝説に一歩近づいたなって浮かれてたけど、まさかこんなところで代償を払うことになるなんて思いもしなかった。
もう手持ちのお金が少なくなってきているから、何かしらお金を稼がないとやばいんだけどなぁ〜。
「ギルドマスターのおバカ」
「ギルドマスターのけち」
「ギルドマスターの意地悪」
三人はギルドマスターのことを冷たい目を向けながら言った。
うん、もしかしてまだ俺が1000万リースを探すときに手伝ってくれなかったことを根に持ってるのかな? それだったらかわいいな。まぁ、ギルドマスターには申し訳ないんだけど。
そう思っているとなぜかギルドマスターは、俺の耳元まで歩いてきた。
どうしたんだろう?
「なぁ、なんで俺はお前さんの女にこんなに嫌われてんだ? なにかしたか?」
うん。君は悪くないんだよ。
悪いのは遠回しに言った俺なんだよ。って言いたいけどまぁいいや。この人、そこまで落ち込んでなさそうだし。
「それは仕方のないことさ」
「いや、本当に俺なにしたんだよ!?」
なんだろうな。なんだろうな。
まぁいずれ、なんでこんなに嫌われてるのか気づかれそうだけど。
俺は、ギルドマスターの言葉を苦笑しながら聞いていると……。
「ロンベルト! ロンベルトはここにいるかぁー!」
聞き覚えのある女の声と同時に、勢いよく扉が開かれた。
あ、あれ? この人って俺がSSSランク迷宮に行っていたことを承認してくれた、迷宮管理委員会とかいう組織の人だよね?
また俺なんかしちゃったのかな?
*
迷宮管理委員会の女は、ギルドマスターの部屋に俺がいるとわかった瞬間安心したかのような顔になった。そして、それは一瞬でなくなりいつものような厳しそうな顔に戻って対面のソファに座ってきた。
「私は以前会った、迷宮管理委員会の者だ。事態が急用なので自己紹介省かせてもらう」
「どうぞ」
なんなんだろう?
事態が急用ってよほどのことなんだろうな。
とりあえず何を言われても大丈夫なように、背筋を伸ばしておく。ちなみに、先程までだれけにだらけきっていたキャシーとミラとシアの三人は何事もなかったかのように俺の隣に座っている。
うん。さすがだな。
「我々、迷宮管理委員会は現Aランク冒険者であるロンベルトにある依頼を出します」
「依頼、ですか?」
迷宮管理委員会から依頼。
Aランク冒険者になると、大きい組織からの依頼っていうのがあるもんだと思ってたけどまさかこんな早く来るとは思ってなかった。
やっぱり、Aランクっていうのは偉大なんだな。
「そうです。依頼というのは今もなお、拡大中のランク特定不可能迷宮通称、SSSランク迷宮の攻略です」
ほほう。SSSランク迷宮か……。
もしそこを攻略したら、2つ目になるってことか。
結構魅力的だけど、以前攻略できたのは俺のスキルにたまたま相性のいい相手だったに過ぎない。そんな中、SSSランク迷宮の攻略なんて場数がすくないから不安が残るな……。
「な……!? まさかあなた、ロンベルトさんと私たちだけでSSSランク迷宮を攻略しろというの……? それは流石に職務乱用じゃないかしら!?」
キャシーは声を荒らげながら、女に向かって訴えかけた。
俺は口に出せないけど、不安に思っていたことを口にしてくれて助かる。だけど、女は依頼を俺に出してきてて強制じゃないから別に職務乱用とはちょっと違うきがする。
「いえ、そのSSSランク迷宮を攻略するのはあなたのみではありません」
「……というと?」
まさか、俺たち以外に一緒に迷宮攻略する人がいるとでも言いたいのか?
「今、確認が取れているものだとすると……Sランクパーティー、
すごい。世界に3組しかないSランクパーティーと一緒に攻略する予定なのか……。
Sランク冒険者って言ったら幼いときに国に訪れていた、剣聖しか見たことがない。あの威圧感のある剣聖と同じランクの冒険者が来るということを聞くと、SSSランク迷宮への不安よりもSランク冒険者と一緒に戦えるワクワクのほうが強いな。
「な、な、な……強者の灯火が来るのは本当なのです!?」
ミラは目を見開いて、驚いていることが見て取れるような顔をしながら女に聞き返した。
ん? 俺は強者の灯火なんて知らなったけど有名なのか?
「はい。もうそろそろで、現地に到着するという連絡は来ています」
「ほわぁ〜……」
ミラは女の言葉を聞いて、ソファに倒れ込んでしまった。
うん。なんなんだ……? そんなに業者の灯火って言うパーティーがすごいのだろうか?
「報酬は?」
「成功報酬は、迷宮内で手に入れた魔石全部と一人あたり3000万リースです」
「よし、受けよう」
もしうまくいったら、一人あたり5000万リースはくだらないだろう。
お金に困っていてなおかつ、生きる伝説に近づけるかもしれない依頼なんて受けないという選択肢はない。ちゃんと魔石を入れるバックをたくさん持って行こぉ〜と。
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