第12話 ラッキーエチチ
「うぅ〜……。ロンベルトさまぁ。怖いですぅ……」
ミラが捕まっている俺の腕への力が強くなった。
「じゅ、獣人のくせに暗いところが苦手なんて、情けないわね」
そんなことを言いながら、キャシーが捕まっている腕ヘの力も強くなっている。
両方の腕からその力強さと同じくらいふくよかな感触がするのだが、これは見てみぬふりをする。
「キャシーも怖がってるよな?」
「それとこれとは別です!」
なぜこうなったかは少し前に遡る。
俺たちはあれから数分闇の中で待機していたら、迷宮の崩壊が収まった。なので、みんなで様子を見に行こうとして闇から出た。
だけど、その場所がやばかった。
おばけが出てきそうなほど不気味な空気に包まれていたのだ!
そして現在に至る。
「きゃややや!! おばけぇ〜!!」
キャシーは急に叫んできた。
痛い痛い痛い!
このままだと俺の腕引きちぎられちゃうぞ……。
「? どこにもいないぞ?」
「さ、さ、さ、さっき白いぷよぷよしてそうなやつがあそこにいたのよ!」
キャシーはそう言って、正面を指差した。
白いぷよぷよ? まぁたしかにそんな感じのがおばけっていうけど、俺には見えなかったぞ?
「…………われ、お前のこと見損いました」
ミラはキャシーのことを落胆した目で見ていった。
……まさか、嘘を言って俺に心配してほしかったとかそういうのじゃないよな?
まぁ俺は、腕に別のぷよぷよが押し付けられているから嘘でもいいんだけど。
「本当にいたんだってばぁ〜!!」
俺はキャシーのことを信用してるから、いるって言うのならいると思うんだけど、もしそいつが俺たちに襲ってきたらどうしよう?
スキルで倒すことができるのだろうか? まだ一度もおばけとなんか戦ったことなんてないから不安だな……。
俺がそう思っていると、ミラの方から申し訳なさそうにトントンと肩を叩かれた。
「なに? ミラ?」
「ん? なんのことです?」
ミラは首を傾げて、聞き返してきた。
「え? 肩叩かなかった?」
「いえ……そんなことしてません」
あ、あれ? してなかったらなんで俺の肩は叩かれたんだ? いや、もしかしてそもそも何かの勘違いだろう。
俺はそう思いなかったことにしようとしたのだが、
今度はキャシーの方の肩が叩かれた。
「なに? キャシー?」
「? どうしましたか?」
「まさか、キャシーも肩を叩いてないとか言わないよな?」
いやな予感がする。ものすごくいやな予感がする。
もしこれでキャシーも叩いてないとか言ったら、俺は一体何に肩を叩かれたんだ……?
「私、さっき見たおばけを探してたので肩なんて叩いてませんよ? ミラの方なんじゃないですか?」
「いや、さっきミラノ方からも叩かれたからそれはないんだよな……」
最悪だ! 二人とも叩いてないとか言ってる!
って、ことは誰が俺の肩を叩いたんだ? この場所には俺たち以外誰も……。
「ォォオオオ!!」
突然、骨の心に響くような重い音が耳に入ってきた!
「「きゃやややや!!」」
二人はその音にビビって、両手で俺の体に抱きついてきた。俺はどうしたものかと思いながら声の主の方を見る。
「ォォオオオ」
そいつと目があった。
真っ白でぷよぷよしてそうな丸っこい体。そしてまん丸い手足。
うん。これ、おばけだな。
「
俺は反射的に攻撃した。
「倒し……たか?」
霧が晴れ
「うぅ〜! 怖かったです。ロンベルトさまぁ〜!」
「ロ、ロンベルトさぁ〜ん!」
二人はそれを見て安心したのか、涙で顔をぐじゃぐじゃにしながら抱きついてきた。
あぁ〜……鼻水で服が汚れちゃう。借り物なのに。まぁいっか! この際だし、いつもひいきにしてくれてる売却店のおじちゃんに新しい服でもプレゼンしてあげるか。金はたらふくあることだし。
「ォォオオオ!!」
「「まだいる!?!?」」
どうやらまだおばけがいたようだ。
俺はおばけに対してせっかく、これから涙を拭いてあげていい雰囲気になりそうだったのに邪魔をされたことに怒りを覚えた。
なので全方向に
「そろそろ、二人とも落ち着いたのか?」
俺はそう言って両手で二人の涙を拭った。
「はい……先程は取り乱して申し訳ございませんでした」
「大丈夫です……」
「そうか。それはよかった」
二人は少し顔を赤らめながらそう言ってきた。
むふふ……ハーレムになったんだから、二人同時とかいいんだよな?
俺はそんな二人で過ごす夜のことを想像していると、
「――ゴゴゴ……」
変な音が聞こえてきた。
なんだ? ゴゴゴって……?
「さっきからなんかここ、揺れてませんか?」
キャシーは両手を横に出し、確認しながらそう言ってきた。
あら何その格好。あともうちょっとで脇が見えそうなんですけど! サキュバスって見た目はあんまり際どくないと思ってたけど、こういうところは攻めてるんだな!!
っと、いけねいけね。今はそんなこと考えなくていいや。
思考を一掃して、俺もキャシーと同じように両手を横にしてここが揺れているのか確認する。
「……ん? たしかに」
「――ゴゴゴ!」
さっきの音が大きくなるのと同時に揺れが大きくなった。
そしてその揺れと同時に天井の石が落ちてきた!
「逃げるぞっ!」
「わっ!」
「きゃ!」
俺は慌てて二人のことを抱きしめて闇の中に入った。
*
どうやら、迷宮が崩壊したようだ。
もしあそこで俺のスキルで逃げようとしなかったら今頃、生き埋めになってたところだ。
よく逃げる判断をした。よくやった俺。
「ふぅ〜……危なかったな」
「はいっ! でもさすがロンベルトさんです! 危険を察知して私たちのことを一緒に連れ出してくれるなんて!」
キャシーは後ろの迷宮を見ながら、これでもないほどに褒め称えてくれた。
「いや〜そうかな?」
そ、そんなに褒められると勘違いしそうなんだけどなぁ〜。まぁ、俺のスキルは最強だけど? 最強だけど??
「あぁ、お前たちは本当に危ない状況だそ?」
「「「え?」」」
知らない女の言葉を聞いた俺たち三人の反応は、これでもないほどに息ぴったりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます