サクラ・マギア・スクールライフ

葵ゆづき@ElcVwa

第1話 「Do you like Cherry blossoms ?」


 今にして思えば、あの桜並木は地獄への入り口だったのかもしれない。


 つい先刻まで共に隣を走っていた幼馴染を抱えながら、そんなことを思った。


 墨汁をぶちまけたかのような冗談みたいな闇夜。鬱蒼と茂った木々はほんの僅かな月明かりさえも通すことを拒んでいる。


 目前の惨状で頭がうまく働かない。

私――四条桜しじょうさくらは、今ここで何をしているんだ?


――そうだ。立ち向かわなくてはいけない。

誰に?それは言わずもがな、敵だ。


 衣擦れの音すらも立てないようにそっと幼馴染の体を横たえて木の影に身を屈める。

 息を殺して、胸元にネックレスのように垂れ下がった10式魔術出力装置A型サクラ・マギアをぐっと握り締めて襲撃に備える。


 敵は魔術を駆使して――それはもう器用に闇の中で空を跳ね残党を索敵して――虱潰しに私たちを追っている。


 あれと真正面から対峙する?冗談も程々にしてくれ。乾いた笑いが溢れるのをすんでで抑える。


 第一に私たち一年生はまだまともに魔術を扱えない。立ち向かう武器になり得るのは付け焼き刃程度の身体強化魔術アスポルターレがせいぜいだ。腰に提げた剣ですら、私たち程度の魔術的強化では相手にとってはそこいらの棒切れと何ら変わらない。


 第二に追ってくる敵はその魔術練度を鑑みるに三年生の、それも相当手練れに違いない。事実私たちを指揮していた二年の先輩は少しばかりの抵抗の末に一刀両断されてしまった。


 接敵しようものならほんの数瞬の内にその先輩のように、あるいは幼馴染のように地に伏せていることだろう。


 脳内で響く死への警告音を本能で抑える。


 恐怖のバロメーターはとっくの前に振り切れた。


 おもむろに立ち上がって気持ちばかりの身体強化魔術アスポルターレを施し、余った魔力は剣にありったけ注ぎ込む。敵はもはや隠す必要も無いとの判断か、馬鹿みたいな量の魔力を垂れ流しつつもこちらに接近してくる。


 身体の震えはきっと武者振るいに違いない。


 ――悪魔め、逃れられないのならばせめて、仲間の死を無駄にしてなるもんか。

 来るなら来い。私が相手になってやる。


 精一杯の強がりはしかし――いとも容易く頭と胴が別れるだけの結末に終わった。




 この四月、私は魔術師を養成する機関である「第1魔術科学校」に入校した。第1、とあるのは日本で五つ同じ趣旨の学校が設置されているなかで最も初めに創設されたからだ。


 ヒトの、それも女性にのみ存在が確認された「魔力」なるものが発見されてから数十年、世界各国はそれを扱う、いわば「魔術師」の育成に力を注いできた。


 魔力は女性なら誰にでもある。けれども魔力を用いて術を導くのは、専用の装備と高度な技術を必要とする。故に国防を担うためにそれらを教育する目的で創設されたのが魔術科学校というわけだ。


 私たち101班の五名はつい今しがた大隊内の訓練を終えた。結果はボロ負け、目も当てられないくらいの大敗を喫してしまった。

 先程確かに切られたはずの首は何事もなかったかのように傷跡ひとつ残っていない。

 部隊級魔術模擬戦闘装C M T C置を用いた訓練、と言えば聞こえはいいけどあれはもはやちょっとした臨死体験といっても差し支えないだろう。


 そのせいもあってか我が班――101班の居室は入校して一週間とは思えないほどの、いわば文字通りに葬式会場のような雰囲気に包まれている。


「だから嫌だったんだ。初めから私はこんな所に来たくなかった」


 ベッドで大の字に手足を投げ出したまま呟いたのは花園なずなだ。普段は綺麗に結ばれたツインテールと眼鏡が可愛いのだけれど、今はその顔もしかめっ面。出生後に受ける魔術素養検査では五段階中の五、魔術師として「最適」とされて顔パスで入校した、総員五名の我が班唯一の「推薦組」だ。


「もーダメだ。これから毎晩寝るたびに思い出すんだろうな。あのお腹を剣で貫かれる感触を」


「ぐちぐちとうっさいわね。士気が下がるのよ士気が」


 なずなの愚痴を一刀両断したのは車折くるまざきあざみだ。長所は明るくて気の強いところ。短所はそれ故に喧嘩っ早いところだと一週間の付き合いながらわかり始めてきた。


「……秒で切り刻まれたあざみに言われたく無いし」


「は?なに?聞こえないんだけど」


 なずなとあざみの喧嘩はいつものことだけども、こんな状況だからかいつも以上に棘があるように感じる。となれば班長としては止めなければいけない。


「二人とも、喧嘩しない。今日の訓練はCMTCでの訓練に慣れることが主眼なんだからやられちゃうこと自体は問題じゃないでしょ」


 二人ともまだ何か言いたげだったのを瞳で制止する。班内の関係の悪化は訓練に支障が出る。団結、規律、士気の三つは常に維持されていなければ十全の戦力は発揮できない、とは教官の言葉だ。

 けれどもそれ以上に寝食を共にする仲なんだから仲良く過ごしたいってほうが本音だ。


「つーちゃん、大丈夫?」


「うん……」


 私の幼馴染で共に入学してきた常盤ときわつばきことつーちゃん。普段は朗らかで笑顔の絶えない彼女が今回ばかりは精神的に参ってるようで、あざみと二人で肩を支えながら訓練室から運んできたが、居室に着くなりベッドに倒れ込んでしまった。


 無理もない。CMTCでの訓練は仮想現実で行われている。痛覚は反映されないけども、流血や傷の表現は現実そのものだ。仲間や自分が血を流してるところを見て平気なわけがない。事実私も訓練後は何度か吐いてしまった。

 あざみも気丈に振る舞ってるけど、内心はかなり参ってるんじゃないだろうか。どこか落ち着かない様子で髪を弄っている。


 そんな中でただ一人、有栖川ありすがわすみれだけは普段と変わらない様子で、訓練後の休養時間をこれ幸いと読書に勤しんでいる。無口ながらも自分というものを確立していて周りの言動に振り回されることのない、言ってしまえばマイペースな彼女だけれども、それは血を見た後でも変わらない様子だ。その強靭なメンタルには感服すら覚える。


「すみれはいつもと変わらないね」


「?そうですね」


何でそんなことを聞くんだろうと不思議にすら思ってそうだ。なんとも頼もしい限り。




「お邪魔するわよ……ってうわ、葬式会場かってくらいの辛気臭さね」


 ふらっと入ってきたのは、先ほどの訓練で私たちを指揮していた二年の先輩だ。

 綺麗な金髪に整った顔立ちが、中世の王族のようで威厳を感じずにはいられない。彼女も私たちと同じように切られたはずなのだけど、そんなことは忘れてしまったかのような晴々とした顔を覗かせているのが少し怖い。


 先輩が来たとなれば、姿勢を正して直立不動、軍隊の上下関係というやつだ。へばっていたつーちゃんもなかば本能で体を起こすも少しふらついている。


おおとり先輩、お疲れ様です」


「あーいいわよ楽に休んで。アンタたちが死んだ顔してるのを冷やかしに来ただけだから」


「おっしゃる通り全員疲労困憊です」


「まあこの時期のCMTCなんて恒例行事みたいなものだから気負わなくていいわよ。娑婆っ気が抜けきってないカワイイ一年生を放り込んで軍人になった現実を叩き込もうっていうのが目的なんだから」


「はあ……」


 一様に渋い顔をする101班に先輩はくすくすと笑いを隠せないようだ。


「効果はてきめんですね。地元が恋しくてたまりません」


 言葉の端々に皮肉を込めるなずなに、おいバカやめろとみんなで視線を送る。先輩に粗相を働くことは命取りであることを入校してからのこの一週間でいやと言うほど理解しているからだ。


「でしょうね。私もちょうど一年前を思い出すわ。この訓練の後、退学者が続出したもの」


 幸いにも先輩は知ってか知らずか話を進めてくれた。おおとり先輩の器の大きさに心から感謝。


「魔術師、っていうと広報の映像みたいなもっと華やかなのを想像してたんですけど。こう宙を舞って炎と氷を操るみたいな」


 魔術は軍が独占的に運用してるから、情報源も軍の広報しかない。今にして思えばあれは嘘ではないが本当とは言い難かった。教官曰く、いつの時代も甘い言葉で志願兵を募って囲い込むのは変わらないらしい。


「別に炎やら氷やらやってもいいけど、装備品の剣を強化して切り刻んだ方が遥かにコスパもいいし、正確だもの」


 身も蓋もないが間違いない。どうも現実はアニメのようにはいかないらしい。

 視界の端でつーちゃんがやけに落ち込んでるのが目に入る。昔から魔法少女やらのアニメが大好きで魔術師に憧れを持ってたもんだから、さぞ現実とのギャップに落胆したに違いない。


「桜、これあげる」


 手渡されたのは、袋一杯のお菓子だった。見ると貼り付けられたふせんに「地獄へようこそ!」と書かれている。


「101班で分けなさい。また次の訓練に向けて英気を養うように、ね」


「ありがとうございます」


 後半の不穏な一言がなければ心の底から感謝できたに違いない。

 お菓子をくれた後おおとり先輩は去っていった。なんだかんだ言っても私たちを心配してくれていたのだろう。


「先輩、いい人だね」


 なんとか心を持ち直したつーちゃんがお菓子を食べながら言う。


「そうね。あたしたちも早くあの人に追いつけるようにならないと」


 そう呟くあざみの目は、先程までの不安に満ちた色は消えて強い決意が滲み出ている。


「あざみはお姉さんが魔術師なんだっけ」


「そそ。忙しいらしくて最近はあまり会えてないんだけれど……自慢の姉よ。あたしも姉みたいになりたいの」


 姉の話をしているときのあざみはいつもより雰囲気が柔らかくなる。きっとお姉さんのことをそれだけ大切に思っているんだろう。ひとりっ子の身としてはそれが少し羨ましくもあった。


「だからこそ悔しいわ。いくら初めての実戦とはいえもう少しやれるもんだと思ってたから」


「わたしたち程度の魔術じゃまだまだ実戦レベルに足りてないってことだもんね」


 つーちゃんの声色は落ち込んでいる。彼女は基礎魔術の習得を苦手としていた分、誰よりも賢明に練成に励んでいた。その結果がこれでは少し不憫だ。


「ま、落ち込んでいても仕方がない。今回の反省会をしよう」


 ぱんぱん、と手拍子を打って班員を促す。勿論みんな気が進まないのは承知だけど、この負けは次に活かさないと、今日死んじゃった意味も無くなってしまう。


「はい!桜101班長!」


「ん、なずな班員どうぞ」


「私たちには課せられた役割が少し重すぎたのではないでしょうか」


「それじゃ指揮とってる先輩に責任を被せてるだけで私たちの反省点とは言えません。却下」


「ちぇー」


「あんたねえ、真面目にやんなさいよ。桜、あたしからもいいかしら?」


「あざみ班員どうぞ」


「今回の訓練での我が班の任務は防衛拠点での監視・連絡よ。直接戦闘を命ぜられてるわけじゃないから荷が勝ちすぎたとは思わない」


「そうだね。事前ミーティングでの予想の段階では仮に接敵したとしても、そこまでの被害を出さずに防衛を主力に任せて後退できたはずだった」


「あまり人を責めるようなことは言いたくないけども、原因はいの一番に接近する敵の兆候を掴んだのが個人間通信魔術コムニケーショニスを使えないなずなだったってことよ」


「はいはい私のせい私のせい」


 私たち101班は演習場自陣の高台に設置した警戒壕で各個に扇形に展開していた。

 訓練に通信魔術の習得が間に合わなかったなずなは、なるべく接敵しなさそうな通行の困難と思わしき最右翼に配置したのだけれど、それがいけなかった。


 攻撃側は最も通行が容易な道路の辺りを予測接近経路であるとの見積りを大きく外して、前哨部隊が単騎で通行困難な森の中を最速で突っ切って来たのだ。


 相手の大駒が我が方に並んだ歩を一手一手潰すかのように右翼から蹂躙されていき、気づいたつーちゃんが慌てふためいて主力に連絡を入れるころには、最左翼で道路を警戒していた私とつーちゃんしか残っていなかった。


「あんたってほんとに推薦組?悪いけど一番足を引っ張ってるわよ」


「あざみ、それを言ったらなずなを最右翼に配置したのは私の判断だよ。班長として見通しが甘かった」


「……いいよ。私のせいだっていうのは他でもない私自身が痛感してるし」


 なずなは膝を抱え込んで俯く。その瞳は少し潤んでいて、これ以上追求してやるのは酷に思えた。


 花園なずなは魔術師として「最適」との判断を下された、いわばエリートだ。ただ本人の不器用さはそれを帳消しにしてしまう程で、なんとか班で特訓して身体強化魔術アスポルターレを身につけたまではいいものの、必成目標だった通信魔術の習得は間に合わなかった。


「でも、わたしたちは同じ班なんだから誰かのせいってわけじゃないよ。一人のミスはみんなのミス」


 だよね、と問いかけてくるつーちゃん。今のお通夜みたいな雰囲気ではその優しさが本当にありがたい。


「つーちゃん良いこというね。これから一年、同じ班で切磋琢磨していく者同士、ワンフォーオールの精神を忘れちゃいけないよね」


「あんたたち、優しいのは結構だけど、部隊の弱いところを起点に突破して攻撃の足掛かりにするのは戦争の常套手段よ。こいつのせいで戦闘で死んだとして納得できる?あたしはできないわ」


 ぐうの音も出ない正論だ。これがもし戦争の最中であるなら私もきっと、あざみの意見を支持していたに違いない。


「あざみの言うことはわかるけど、でもこれは戦争じゃない、訓練だよ。私たちに欠けていて、なによりも戦力を補うことができるのは五人の団結じゃないかな」


 それきり部屋が静まりかえった。あざみは何か言いたそうだったけど結局口をつぐんでしまったし、なずなは膝を抱えたままだ。重苦しい雰囲気はさっきまでと変わらない。


 そんな時だった。それまで部屋の端で我関せずを貫いていたすみれがぽつりと呟いた。


「……桜」


 名前を呼ばれたのかと思って振り向くと、彼女はこちらには目もくれずに外の景色を眺めてる。

 釣られて窓に目をやると、春風によってこれでもかというくらいに舞い上げられた桜の花吹雪が雪のように宙を舞っていた。


 つーちゃんに至っては前のめりになって窓から首を伸ばしている。今年は例年よりも冷え込んでいたせいで開花が遅れていたこともあって、ここまで満開の桜を見るのは今年に入って初めてだ。


「わたし、桜、大好きだから」


 照れ臭そうにはにかむつーちゃん。それはまるで愛の告白のような湿度の籠った甘い声。

 私に向けられた言葉では無いと分かっていても思わず赤面して顔を背けてしまう。


「つばきがそんな大胆な子だとは思わなかったわ」


「これ私たち席外したほうがいい?」


 あざみとなずなはいつも喧嘩してるくせにこう言う時は息ぴったりだ。


「い、いやそういう意味じゃなくて……!確かに桜ちゃんのことは大好きだけど……あの、えっと……」


「んもうつーちゃんはほんとに可愛いねえ」


 わしゃわしゃと半分照れ隠しで頭を撫でる。天然なのかわざとやっているのか、つーちゃんは時々そういうことをするから不意にどきっとさせられてしまう。


「入校してまだ1週間だけど、桜とつばきのイチャイチャはもうお腹いっぱいね」


「二人とも、本当に仲が良いのですね」


 すみれにまで言われてしまった。まあ私がこの学校に来た理由はつーちゃんが居るからっていうのが大部分を占めるからあんまり否定はできない。


「まああたしも桜は大好きよ。なんか今年の春はしっくりこないと思ってたらこれだったのね」


 あざみはそう言って窓の外を覗き見る。

 私もそんなあざみにおぶさるようにして桜並木に目をやる。重いんだけど、という文句は聞かなかったことにした。


「あれ、さーちゃんって桜嫌いじゃなかったっけ」


「うそ、桜を嫌いな人とか居るの?!」


 あざみが信じられないといった目で見てくる。勿論嫌いなわけじゃないし、それは少し語弊がある。


「別に嫌いってわけじゃないよ。ただ――」


 桜――私の名前にも入ってるこの花はいつ見てもどこか切なさを覚える。ノスタルジック、といった方が正しいかもしれない。


 満開の桜はそれはもう例えようもないくらい美しいけれども、その花弁を散らして青付き始めようものなら途端に人々は興味を失ってしまう。


 やがて地に落ちて汚れた花弁を踏みつけて何事もなかったかのように、緑が生い茂る頃には新月の如くだれも気にも留めないのだ。

 だからだろうか、なんとなく満開の桜を手放しでは褒めたくないような、何とも言えない気持ちになる。


「私は桜が好きじゃない」


 みんなが窓に張り付いてる中、一人動かなかったなずなは呟いた。


「だって、なんだかわざとらしい。嫌味かってくらい綺麗で、まあ花として理想的ではあるんだろうけど」


「あーはいはい。あんたは捻くれてるから驚きが全くなかったわ」


「ふん、それが私の正直な感想だ」


「また始まったよ……」


 喧嘩するほど仲が良いとは言うけれど、この二人は性格というか、本質的なところで似通っている……と勝手に思っている。それこそ同じ形のパズルピースが重なり合わなかったり、磁石の同極が反発し合うとかそういった関係に見えて仕方がない。


 ふと、すみれに目をやると、桜並木をぽけーっと眺めたまま固まっている。


 この子は自分をあまり見せたがらないし、自己主張をするところも入校してからというもの目にしたことがない。


 正直に告白すると、今の私の好奇心は専らすみれに向いている。彼女の持つ独特な雰囲気のせいだろうか。固く閉ざされた扉の向こう側が気になってしまう、そんな欲求。


「すみれは桜が好き?」


後ろではぎゃあぎゃあと言い合いをするあざみとなずな。二人を止めようとおろおろしてるつーちゃんが居る。その三人には聞こえないくらい、耳元でこっそりと問うてみた。


「私は……」


しばらくの逡巡の後――


お返しとばかりに、私の耳元でこそっと答えを告げてくれた。


「今はまだ、わかりません」




 気がつくと、空は薄いだいだい色に塗りつぶされていた。遠くの防災無線からかすかに音楽が聞こえる。もうすっかり夕方だ。


「よーしご飯行くぞー」


 班員に呼びかける。はーいと返事する班員の声からはもう、葬式のような暗さを感じない。


 詰まるところ、私たちは既に軍人になっていたのかもしれない。厳しい訓練に打ちのめされても再び立ち上がるような、そんな軍人に。


 アニメみたいにモンスターやテロリストが居るわけでもないこの平和な日本で、私たちは国を守るために魔術師となったのだ。


 どうもうまく纏まっているとは言い難い101班だけれども、不思議と私はこの班が気に入っている。だからこそ誰一人欠けることなく、卒業できますように。


 胸元で揺れる魔術師の証、10式魔術出力装置A型サクラ・マギアを握り締めながら、そんなことを思うのだった。



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