エンジェルタイム

木瓜

エンジェルタイム



「……ふぅ」


小さくため息を吐くと、私は手を止め、万年筆を机に置く。


窓からは、暖かな日差しが差し込み、春の静かな訪れに、どうしても気持ちが波打ってしまう。


「参ったな…。一向に原稿が進まない…」


プロットも定まらず、ここ一ヶ月程、全く作品を仕上げられていない。


妻が居た頃は、創作意欲も、アイディアも、これでもかと言うぐらい、溢れ出ていたのに。


「一年経ったと言うのに…。やはり、この時期はどうも、落ち着かない」


淡い、桃色の花々が芽吹き始める、春。


妻と、愛猫のミケも連れて、香しい空気の中を、良く散策していた。


毎年恒例の、そのささやかな行事が、私に生きる力を与えてくれていたことは、最早言うまでもない。

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