彩りある雫に葛藤を
ソウカシンジ
涙交じりのプロローグ
私はOLだ。夢を諦めて仕方なく、会社に就職したそんなOLだ。今日も毛髪が抜け落ちた上司に理不尽に怒られ、セクハラまで受けてしまった。その仕事帰り、急に雨が降ってきた。傘を持っていなかった私は、ビニール傘を買おうと急いでコンビニに駆け込んだ。全くついていない、予報では降らないと言う話だったのに。私は、持っていたタオルで髪についた雫を拭うと、ビニール傘を手に取りレジに足を向けた。
「これお願いします。」
そう言ってビニール傘をレジ上に置くと、レジ打ちの男の子はぎこちなく会計を始めた。きっとアルバイトなのだろう。結局男の子は、ビニール傘一本を会計するのに五分程掛かっていた、別に急いでいるわけでもないので、どれだけ時間が掛かろうと問題ないのだが、そのもたつき様には少し呆れてしまうものがあった。
「あ、ありがとうございました。」
男の子はこれまたぎこちなく挨拶をした後、恥ずかしそうに微笑んだ。その様子に私は少しだけ良い心地になったのだった。
自宅のあるアパートについた私は階段を登り、ビニール傘を持ちながらぎこちなく自宅の鍵を開けた。私はしっかりと戸締まりをした後、乱雑に靴を脱ぎ捨てると一直線に冷蔵庫へと向かい、缶ビールの栓を開けた。やはり嫌な事があった夜はビールを飲むに限る。ソファーに大きく座り、はあ。と大きく溜息をつく。私は疲労困憊の身体が望むままに目を閉じ、眠ってしまった。
翌朝、忘れていたが今日は土曜日だ。折角の休日だが特にすることもない、スーツを着たまま、風呂も歯磨きもしなかった私が出社するのを避けられただけでも僥倖だと思うことにしよう。
部屋着に着替え、ダラダラとテレビを見ていると、突然インターホンが鳴った。「はーい」と返事をして足早に玄関に向かう。宅配も出前も頼んでないし、一体誰だろうか。ドアを開けると、そこには友人の理夏が立っていた。「久し振り」と彼女は笑顔で私に話し掛け、私もそれにはにかんで「久し振り」と答えた。彼女は「入っても良い?」と私に問いかけた。私が驚きながら了承すると、彼女は茶色のポニーテールを靡かせながら、お邪魔しますと同時に部屋に踏入り、「久し振りに来たけどあまり変わってないね」と無遠慮に感想を述べている。少し強引な性格は相変わらずの様だ。
そう感じた途端、私は何故か涙が止まらなくなり、玄関に座り込んだ。
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