第三章 あまやどり

かなしいことや、イヤなことがあるとき、サトシ君はいつも、この「おすなば」にきます。


ここは、「ほらあな」みたいで、なにかおちつくのです。


とくに、「あめのひ」は、だれもこないので、いいのです。


そして、「おかあさん」のことを、おもいだして、よくひとりで、ないています。


おとうさんのまえでは、あまり、なきたくないのです。


サトシ君がなくと、おとうさんが、つらそうにみえるからです。


サトシ君は、すなにうまっている、トラックのおもちゃを、シャベルでたたいています。


パン、パンとおとがします。


「おすなば」のそとでは、「あめ」がふっています。


シト、シト。

ピチャ、ピチャ・・・。


すると、こきざみな「おと」がちかづいてきました。


なんだろうと、かおをあげると、ちいさな「おんなのこ」が、はいってきました。


『キャーッ、ぬれちゃったぁ。

あっ、こんにちは・・・』


『こんにちは』


「おんなのこ」は「あめ」にふられたのか、かみと、ふくが、すこしぬれています。


サトシ君のほうをみながら、ほほえんでいます。


かわいい、「えがお」です。


『これで、ふきなよ』


サトシ君は、もってきているリュックから、タオルをだして、わたしました。


『ありがとう』


「おんなのこ」はうれしそうに、ゴシゴシふいています。


このへんでは、みかけない「こ」です。


『おにいちゃん、なんさい?』


『5さい』


『わー、もっと、おおきい、かとおもった。

わたし・・4さい・・・』


ふたりは、すぐ「ともだち」になって、「おすなば」で、あそびはじめました。


サトシ君がリュックから、ジュースとクッキーをだすと、「おんなのこ」は、めを、かがやかせて、いいました。


『すごーい、おにいちゃんのリュック、まほうみたい』


そして、ふたりで、おいしそうにたべました。 

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