23話-2 ターニングポイント(咲side)
「ただいまですー」
いつも通りの声かけだが、いつもとは何かが違う。
(ああ、そうでした…… 優真くんはもういなくなってしまったんでした。
返事が帰ってこないのはもう慣れっこだと思っていたのですが、案外寂しいものですね)。
優真くんがいないという現実は正直受け止めきれていませんが、もう二度と取り返しはつきません。
おとなしく、本来の生活に戻ったとでも思いましょうか。
お腹がすいてきました。
時計を見ればそろそろ晩御飯の時間ですね。
「今日のメニューは何にします……」
(もう…… 優真くんはいないんです。
いつもは二人で立っていたキッチン。
一人になった途端急に広くなったように感じますね…… 寂しいです)。
凛ちゃんと選んだお土産の中にカレーがありました。
今日はこれにしましょうか。
正直、今日は料理を作る気力はありません……
優真くんのことを気にしないようにしても、何をやっても二人での思い出がよみがえってきてしまいます。
久々の一人での食事。
こたつで温もりを感じながら食べているはずなのに、どこか冷たく感じます。
そうだ、お風呂の準備もしておかないといけませんね。
普段の風呂洗いは優真くんがしてくれていましたので、今日は自分でしないと。
カレーを食べ終わり、一人で皿洗い。
普段は優真くんと二人で皿を洗って、いっぱい話すのですが……
(って! 何を考えているんですか私!
これ以上引きずっていても優真くんはもういないんです……
そう、優真くんなんていなかった……)
ダメだ、これ以上考えていたらまた泣いてしまう。
こんな調子じゃ明日以降どうするんですか。
自分の体に鞭を打ち、風呂洗いを始める。
(一人の時はそもそもお風呂にあまり入っていなかったので、浴槽を洗うことはあまりなかったのですがこんなにしんどかったんですね。
優真くんには感謝することばかりです)。
風呂の湯が入ったのを確認し、脱衣所へと向かう。
(今日はスク水ではなく、もう少し大胆な水着で……
いや、優真くんはもういないんです。
よくよく考えたら何も身に付けなくていいじゃないですか)。
久々の一人風呂、こんなにも浴槽は広かったのか。 嫌でもそう感じてしまう。
風呂からあがり、そのままベッドへ向かう。
二人で使っていたベッドも今や一人。
真ん中で大の字で寝られるのだ。
(本来は研修旅行から帰ってきて、優真くんともう一歩関係を進めていたはず……
あんなことやこんなことも一緒にして、愛を確かめあっていたのに…… どうして……)
考えれば考えるほど涙が溢れてくる。
[優真くんはもういない]
その事実を本当は認めたくない自分がいた。
(本当にこのままで良いのでしょうか……
今すぐにでも優真くんにあれは気の迷いだったと言って仲直りを……)
優真くんのメールアドレスは持っています。
ただ、私がこのままメールを送っても信じてもらえるかどうか分かりません。
それならば、木下さんを通して連絡する方が良いでしょう。
思い立ったが吉日です!
すぐに行動するとしましょう。
[突然のメール失礼します]
[どうされましたか?]
[優真くんをなんとかして連れ戻していただきたいのですが、可能でしょうか?]
[可能と言えば可能ですが……]
[どんな手段でも構いません]
そう送ると、木下さんから電話がかかってきました。
「もしもし? どうされましたか?」
「どんな手段でもと言われれば、誘拐なりお金を積むなり何でもありますが……
本当にそれでよろしいのですか?」
どういうことだろうか。
連れ戻せるのならなんでもいいのだが。
「僭越ながら言わせていただきますが、仮にそれで呼び戻したとして、本当に佐藤様が納得してくださいますでしょうか?
咲様自らが説得なさる方が良いのではありませんか?」
確かにその通りです。
卑劣な手段で呼び戻したとして、優真くんがもう一度私のことを愛してくれるとは限りません。
そんな状態で同居するのも嫌です……
やはり私自身でなんとかしなければ。
「大旦那様からは手出しするなとお聞きしましたが…… これも咲様のためです。
佐藤様の新しいアドレスをお送りしますのでそれにメールをするなりなさってください。
ご武運を」
そう言われて、電話を切ると優真くんのアドレスが届きました。
なんとか返事だけでもいただければ……
私の優真くんを取り戻す旅は今、始まりました。
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お読みいただきありがとうございました!
投稿1時間前に起床。
まっさらな状態から書き上げたので、普段よりも誤字や設定崩壊がひどいかもしれません。
次からは気を付けます。
話は変わって、エイプリルフールだし嘘をつくか! と思っていたのですが、気づいたら午前は終わっていました。
一つだけ連絡するとすれば、おそらく春休みが終わる頃には一度この小説を完結させる予定でいます。
私は今年高3、受験生です。
そこそこの大学を目指しているので、小説を書く余裕はなくなってしまいます。
ここまで書き進められたのも、皆様のお陰です。
本当に感謝しております。
あと少しだけですが、良ければ完結までお付き合いください。
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