第七話 受け継がれた卵
「ピー、ピー。」
卵の殻の割には小さい。
生まれた鳥のヒナはめちゃめちゃ可愛かった。
俺は昔、実家で犬を飼ってよく可愛がっていた。
そのため、一人暮らしを始めてからペットを飼いたいと何度も思った。
実際、バイトや学校もあったから諦めてたんだけど…。
「俺がお前の親だぞー。」
自分のことを指しながら俺はそう言った。
ミミリは暖かい目で俺と鳥を交互に見てる。
正直俺の行動はやばい奴だが可愛いって正義。
もう雰囲気がほのぼのしている。
「俺の名前はコウイチ、コウイチ。」
「コーイチー、コーイチー。」
「お前の名前は、そうだな…。」
ここはかわいらしい名前を付けてあげよう。
可愛い、大きい、ひな鳥。
そうだ!
「お前の名前はヒーナ!」
「オレのナマエはヒーナ、オヤ、コーイチ。」
「そうだぞ、ヒーナ。えらいな~。」
あれ?ヒーナ記憶力いいな。
っていうかあんまり疑問視してなかったけど普通に喋るんだな。
「ミミリ、ちょっといいか?」
「はい~、何でしょう~。」
ヒーナのモフモフの体毛を触りながら返答するミミリ。
俺も触りたーい!
「じゃなくて、ヒーナは頭がいいよな。
なんか変わった鳥だったりすんのかな。」
「多分ガクシャドリなんじゃないんでしょうか。」
ミミリの話ではガクシャドリとはとっても頭がいい種族なんだとか。
その昔、危険地帯で生きていたガクシャドリは手っ取り早い方法を思いつく。
それが脳自体を発達させ、言葉によるコミュニケーションをとることだった。
「しかし、これが危険とみなされ人間によってほとんどは命を落としたんです。」
「なるほどなー、それで納得がいった。」
もしかしたら頭のいいガクシャドリはここが一番安全だと思ったのかもしれない。
事実、俺もミミリもヒーナに危害を加えるどころか守る道を選ぶだろう。
あの夜、家の前に卵が落ちてたのは謎だったんだけど。
俺なりに理解したつもりだ。
「でも、本で見たときは体が白だったんですが…。」
確かに体毛は真っ黄色。
「んー、個体によって色が違うんじゃないか?」
「否定はできませんねー。」
「元気に生まれてくれたら何でもいいや。な、ヒーナ。」
「ナ、コーイチ。」
さて俺たちは新たな島の住人としてヒーナを加え、また仕事を始めていた。
さすができる子ヒーナ、上から魔物の位置をミミリに伝えてくれているらしい。
一応ミミリは生態系が崩れないように、魔物の倒し方を考えているようだ。
ヒーナはその点に置いても優秀だとミミリが話してくれた。
俺はヒーナの家づくりを始めた。
でかいに越したことはないと、かなりのサイズで設計している。
そういえば、俺も一つ新しいスキルを覚えた。
「ストック!」
そう唱えると目の前に今保持している建築資材が表示される。
その中から、資材を選んで召喚できるのだ。
なんか悪い使い方ができそうだと思ったのだが、本当に資材しか出し入れできない。
もう建築しよ。
素材を集めたり、設計をしていたら今日も夜になった。
ヒーナは早くも成長してきて体のサイズは俺より二回りでかいくらい。
一週間くらいでそのサイズになった後止まり、二週間たった今もあんま変わんない。
不思議なもんだなー、と思うけどやっぱり可愛い。
それに、サイズが変わらないなら服も作れる。
そう思い、服を作りながらヒーナと話していた。
「コーイチ、服作ってくれてアリガト。」
「感謝の言葉を言えるなんてヒーナはえらいな~。」
「あのね、コーイチ。」
「ん~、なんだ?」
「オレ、島の外行ってみたい。」
「島の外?」
そうか、ミミリから外の話を聞いたのかな。
島の外か、そういえば考えたことなかったな。
ミミリがこの島にいる理由はわからないけど、多分出る気はないだろう。
でも、俺たちが出る分には別にいいよな。
俺はこの島を気に入っているし、言ってもすぐ戻ってくるけど。
島の外を見てみたい気持ちもあるな。
「俺も、この世界のことはよくわからないんだ。」
「ウン、ソウダヨネ。」
「だから、ミミリに聞いてみよっか。俺も行ってみたいし。」
「イイノ?ヤッター!」
とはいってもミミリはもう寝ているかもしれない。
明日は、色々余裕ができたから休むとも言っていたし。
今日はもう寝るか、その前に。
「ヒーナ、服完成したぞ。」
「着せてー。」
「ほら、こっちこい。どうだ?」
「あったかい!ヤッター!」
すごく喜んでいたが、ヒーナはその反動で眠ってしまった。
よし、あらためて寝るとするか。
その日は、久しぶりに夢を見た。
転生したあの日のことを思い出す。
「将来は都会ででっかい家に住みたい!」
そっか、そんな都会に行けるのかもしれないな。
次の日の朝、ご飯を持ってきてくれたミミリに話を出してみる。
「俺とヒーナで島の外に行ってみたいんだけど。」
「いいじゃないですか!お土産お願いしますね!」
ミミリもすごく肯定的なようだ。
色々買い物するのもありだな、お金の概念がよくわからないけど。
「あ、でも…。」
ミミリの顔が曇りだす。
なんか問題あったかな。
「ヒーナは魔物ですから、国に入れないでしょう。それに…。」
あー、なるほど。
俺って戦闘に関しちゃてんで駄目だからな。
そこを心配してくれているのか。
「それならモンダイないよ。」
ご飯を食べていたヒーナがこちらによって来る。
一体、何をするつもりなんだろうか。
「チェンジ・ヒューマン!」
気づいたときにはヒーナはいなくなっていた。
その代わり、一人の少女が立っていた。
「お前、ヒーナか?」
少女がこくりと頷く。
そして同時に思い出した。
そうだ、ミミリが話してくれた思い出の中に黄色の髪の女の子が登場した。
その子の適正は「変身」。
ヒーナの体毛が黄色かったのはそういう訳か。
「ヒーナさんは魔物を何匹も倒していたので安心ですね。」
ミミリもホッとしている。
ヒーナってそんな強いんだ。
俺ってそんな信用されていないんだ。
複雑な心境だったが、これで心置きなく島の外に行ける。
俺とヒーナは準備を済ませて出発することになった。
なんだかんだ、初めて島の外に出るんだ。
一体どんな景色や出来事が待っているのだろうか。
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