第2話 やる気のない朝礼
そして、到着するのは〈
「はーい注目。こいつが今からうちの最終選考を受ける馬鹿だ」
「フェイ=リアでっす! どーぞ宜しくお願いしまっす‼」
ゼータの投げやりな紹介に対して、めげることなく元気な挨拶するフェイ。それに対して、十数人いる局員たちはだんまりだった。
イヤホン付けて音楽を聞いている者。
だけど、そんなのはいつものことなので。
ゼータは何も気にすることなく言葉を続けようとするが、一応隣の馬鹿を見やる。……まぁ、ウズウズとワクワクが半分半分といった顔をしているので、気にしてやった俺が馬鹿を見た――と、手に持つ書類を確認する素振りをしながら、言葉を続けた。
「まぁ、この馬鹿そうなのが本採用されるかどうか決まるのは、知っての通り今日の働きぶり次第なんだが……今年はどうするかな。アキラ、お前後輩が欲しいとか言ってたな?」
その疑問符に、席から飛び上がったのはくすんだ金髪の少年。年はフェイよりは上の十七歳。入職歴もまだ二年で、まだ〈
だけど、二年目のアキラ=トラプルカは眉尻を上げた。
「言ってないっすよ! オレは下僕がほしいって言っただけで……絶対、嫌っす! 最終選考に同行するなんて面倒、ぜったい嫌っすからね!」
その全力の拒否に、その他十数名はせせら笑うか無関心のみ。
その中で、ゼータはアキラの顔すら見ず淡々と続ける。
「まぁ、俺が命じた以上、お前に拒否権などないんだがな。当然、最終試験には俺も同行する。それまでの面倒は任せた」
「げ~っ。アドゥル副長もいるとか、もっと面倒じゃないっすか……」
「喧しいわ。とにかく、今日の朝礼のビッグニュースはこんなもんだな。後は――」
その後、ゼータは今日の配達スケジュールと担当局員のみを口述。毎日これといった伝達事項などない。むしろそんなモンが毎日ある方が困る。ゼータは平和主義なのだ。
そして、最後に今日の一大イベントのみ復唱。これぞ模範的な朝礼である。
「じゃあアキラ。出立は一二〇〇。それまでに隊全員分の用意も頼むな」
「……了解っす」
「それじゃあ、解散!」
その言葉を待ってましたとばかりに、一斉に局員たちが立ち上がった。散り散りに去っていく同志たちを見届けながら、こういう時ばかり仲が良くて何よりだ、とゼータが胸中で物寂しく感じていると。
「新人候補生く~ん。コッチっすよ~」
アキラに手招きされて「うっす」と挨拶するフェイ。そして彼の元へ行く前、「行ってきます!」と自分に会釈してくる律儀さよ。
ゼータがシッシッと追い払えば、フェイはゼータの悪態など気にすることなく、スタスタと「元気だけはいいっすね~」と苦笑するアキラの元へ。
アキラはやる気のない態度全開ながらも、見習いに手を差し出していた。
「じゃあ面倒っすけど……きみの面倒みることになったアキラ=トラプルカっす。短い付き合いかもしれないけど、どーぞよろしく」
二人の握手を見届けて、ゼータは踵を返す。
まぁ、あいつに任せておけば見習いが死ぬことはないだろう。
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