フラッシュインザバック

万倉シュウ

序章

序章

「死ぬよ、君」


 突如、眼前に謎の中年男性が現れ、少年は戸惑いをあらわにした。そして、発言の薄気味悪さから一歩後ずさる。午後十時を回るゲームセンター裏の路地には、少年らの他に人影はない。


「すぐに帰らないと、不良グループに恫喝どうかつされた挙句、殺される」


 街灯がチカチカと明滅し、中年男性の輪郭が徐々にはっきりとしてゆく。中肉中背の特に目立たない容姿に、疲労感と寂寥感の滲む微笑が貼り付けられている。人混みの中にいればおそらく誰の記憶にも残ることがないだろう。穏和な雰囲気が薄気味悪さを助長している。

 次の瞬間、彼の口から放たれた台詞が少年の背筋を凍らせた。


「僕にはわかるよ。だって――予言者だから」

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