バーサーカーより愛をこめて……

笠置エナ

第1話 その者、狂戦士につき。

 太古より、戦争に駆り出され、多くの血を流した種族があった……


バーサーカー(狂戦士)と呼ばれる種族である。


今では”禁術”とされた、バーサーカーを操る魔法により、

彼らは束縛され、幾多の戦争に投入された。


ラグナロク(最終戦争)と後に言われる世界戦争により、

バーサーカーの数は激減、束縛魔法を禁術にすることにより、

ラグナロクは終結、バーサーカーは絶滅したと言われていた……


しかし、僅かな生き残りは、人里離れた山奥でひっそりと暮らしていた……


さらに100年後……


バーサーカーの運命を背負った命が誕生する。


「ナイ」と名付けられた少年こそ、最後の血を引くバーサーカーである。


禁術こそ無い時代にも関わらず、狂戦士伝説は今も残り続けていた……


100年の月日が小さな集落を、一つの町へと変えていた、

そこへどこから沸いたのか、この町が狂戦士の末裔の町だという噂が立ち始める。


しかし、すっかり平和な町へと変貌していたため、

噂を聞き付けた屈強な戦士、列国のスパイが訪れるも、

「ただの噂に過ぎなかった」と、立ち去っていく日々が流れた。


そこへ、ナイの運命を変える、一人の魔術師が町を訪れた……


彼は、とある強国の宮廷魔術師を名乗り、

情報収集を始め、ついにナイの家族に接触してきたのである。


「狂戦士の血を引く疑いのある者を探している」と言い、

ナイの家族を尋問し始めた。

「そんなはずはない」

と否定する両親だったが、魔術師がナイに目掛けて、不思議な魔法を唱えた。


その時である。


突如、ナイは何かに憑りつかれたように叫びだし、激高した。


「これは禁術指定されていないが、狂戦士を識別できる魔法である」

と言い、

「この少年は狂戦士の血を分けている疑いがある、王国へ連行する」

弁解の余地なく、ナイは束縛され、王国へと連行されてしまった……


ナイが魔法から我に返った時には既に拘束され、連行される最中だった。

振り返ると、泣き崩れる母と、悔しそうにこちらを見る父の姿があった……


(母さん! 父さん!)

叫ぼうにも、先の激高により喉がつぶれていたナイには、

言葉すら出すことが叶わなかった……



続く。

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