通学途中

バブみ道日丿宮組

お題:いわゆる電車 制限時間:15分

通学途中

 電車の中は意外に暇だ。

 外を眺めたり、スマホをいじったり、睡眠したり。

 本格的に時間をつぶすのであれば、読書が効果的だったりするが、

「……むむ」

 満員電車ともなると、どれもやっていけない。

 密着に圧縮。人が押し寄せてくる。

 そのタイミングでふとももを触られたり、乳首をつままれたり、お尻を撫でられることは結構ある。

 満員って状況だ。間違って触ってしまったということもあるだろう(乳首をつまむのは確信犯だろうが)。

 今現在私はされてる状態だ。

「……?」

 後ろを振り返ってみても誰がやったのかわからない。むしろ、誰もがやってるような気さえしてくる。相手は手慣れてる。振り返る前に感触が消え、雑踏に塗れる。

「……ん」

 静かにため息を吐き、あと十分は続くだろう満員に備えることにした。

 揺れるたびにやはり触られた。

 その瞬間に手を掴み取れればいいのだけど、あいにく手が簡単に動かせるような状況じゃない。動かせば、目の前にいるOLさんのお尻か、ふとももに手が当たる。

 そうすると、今度はこのOLさんが痴漢されてる感覚を味わってしまう。

 それはよくない。

 されてるのは私であって、この人じゃない。

 私もそういった勘違いであれば、いいのだが後ろにいるのはみんな男性。スーツ姿であったり、学生服であったり、私服であったりと、塊がそこにある。

 どれかが犯人。でも、誰もが犯人じゃないかもしれない。

 冤罪は犯罪に近い。だから、我慢するのが一番平和的かもしれない。本格的に痴漢をされてるわけじゃないし、まだ耐えきれる。

 脱がされたり、指を入れられたりしてない。

 友だちの状況とは違う。

 たまたま制服姿の女子生徒がいたから、手を向けてみただけであって、本来ならちびっこでブラも必要としてない私をどうこうしたいと思う人はいないだろう。

「……」

 一駅たどり着き、人が降り、入ってくる。

 この流れでいなくなってくれれば、何も問題ない。

 OLさんは降りてしまった。

 周囲は男性だけになった。椅子に座れれば、多少防御できることもあるが、途中駅で乗車してる私には好都合な状況は訪れない。そもそも位置が悪い。

 椅子の目の前でなく、扉のあるところの中心点にいる。

 運良く誰かが席を離れたとしても、私が座れるチャンスは起こらない。

「……ほ」

 一駅がまた過ぎた。

 痴漢っぽい触り方をしてくる人はいなくなった。

 あくまで痴漢っぽい……触り方をする人がいなくなっただけで、触ってくる人はいる。密着してるのだから、起こるべくして起こる。

 乳首が擦れるたびに、電気が走ったような感覚がする。

 ブラはしなくとも、バンソーコーかなにかで守る必要があるかもしれない。いや……素直にブラをつければいいのだけれど、なにか負けた気がして、かれこれ数年過ごしてる。

 保護はきちんとしたほうが良いと友だちはいうし、考える時期がきたのかもしれない。

 そんなことを考えてると、降りる駅に到着した。

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通学途中 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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