第18話

 「母ちゃん、遊びに行ってきまーす!」


 「はいよー!森に入るんじゃないよー!」


 昨夜はネールになって初めて魚を食べたが薄く塩で味付けされただけだったけど、なかなかに美味しかった。


 わがまま言えばもうちょっと塩が濃い方が良かったけど辺境の村にとって塩は貴重だから仕方ないか。


 父ちゃんが魚を持って帰ってきた翌日、農作業の手伝い後に湖に向かう事にした。


 遊んでくると伝えて母ちゃんや父ちゃんが不審がらなかったのは普段訓練してるからだと思う。


 どうも2人からは僕の訓練が珍妙な動きに感じてるようで遊んでるように見えてるみたいだ。今日もいつもみたいに珍妙な遊びをするのだと思っているみたいだから特に何言われる事もなくすんなり家を出れた。


 まず村を抜けしばらく歩くと川があるからその川沿いを登って行けば湖に着くはず。


 川までは何回か行った事あるけど湖はない。湖の立ち入りは禁止になってるから他の村の人に見つからない様に慎重に行かないと。人目を盗みつつ村の中を歩く。


 村といっても点々と民家があるだけなんだけどね。この時間はみんな午前中の農作業を終え家で休憩中だから殆ど人がいない。


 急足で村を通り過ぎてしばらく、だいたい30分ぐらい歩くと川にたどり着いた。


 母ちゃんに水汲みを頼まれて随分前に来たっきりだけどその時の水に比べて心なしか透明度が落ちてる気がした。森からの水が流れ込んでる影響なのかな?まぁ、それでも日本の川と比べたら段違いに綺麗なんだけどね。


 川沿いは上流に向かうにつれ緩やかな登り坂になっている。登り坂は大した事ないんだけどとにかく石や岩が多くて歩きづらい。


 少し川から離れて歩けば石や岩が少なくなるけど代わりに森の際沿いになるので魔物が出てきそうで怖くて近づけないから、大変だけどあくせくしながら進んだ。今、森の魔物と遭遇したら間違いなくやられちゃうからね。


 一時間ぐらい経ったのか、しんどくて長く感じただけかもしれないけど、なんとか湖に到着した。あぁ、疲れたぁ。


 その場で座り込んで湖に視線を移すと、思ってた以上に広く、めちゃくちゃ水が澄んでるからか湖の真ん中から向こうの水面に淡いコバルトブルーが広がっている。


 こりゃすげぇーや。なんかとっても癒されるなぁ。疲れもあってかしばらく座ったまんまぼーっと湖を眺めていると手元の水際からパシャパシャ聴こえるので視線をそちらに移すと昨日食べた魚が4.5匹集まっていた。


 そうだ、魔物!魔物を探しに来たんだった。


 と、いっても魔物の姿は今のところ見えない。向こう岸を見ると確かに森から流れる川があった。


 向こう岸に渡ればと思ったんだけど湖の半分より向こう側の湖沿いは森に隣接しているから危険で行く事が出来ない。


 うーん、どうしたもんか。取り敢えず湖を鑑定してみた。



パイクル湖

湧水による湖で透明度が高い

大地の神ルグスにより創造された

ピロの森中層部に流れる川と繋がり魔物が流入している



 大地の神ルグスって、ラスボスの一人じゃん。湖と森って名前あったんだ。知らなかった。てか、マチカネ村の皆んなは誰も名前知らないと思う。今まで聞いた事ないし。


 まぁ、それよりもやっぱり魔物が森の川から流れ込んでるみたいだな。魚の魔物だったらいいんだけど、どうやって確認しようかな。


 しばらく疲れもあってか、ぼっーと湖を眺めていると、パシャパシャ泳いでいた魚達が急にバシャバシャ暴れ出した。


 見ると一匹の魚が別の魚に噛みつかれていた。もしかして!?


ヨコヅナデビル

魚型の魔物

レア度E

雑食で繁殖力も高い

-ステータス詳細略-


鑑定したら魔物だった!

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る