「凍」 剣の杜

@Talkstand_bungeibu

第1話

「今日は真雪の誕生日、レストランも予約したし、サプライズの花束も用意した、準備は万端だ」

俺はカレンダーに赤マジックで丸を付けた日を見て意気込んだ。彼女を喜ばせるなら、これくらいの出費は軽いものだ。

あとは俺自身が準備してしまわないと・・・。髪をセットし、ブランド物のジャケットとパンツで真雪に恥ずかしい思いをさせないように、身を固める。

時間は――、まだ約束の時間には余裕があるけど花束の仕込みのことを考えると、早めに行ってお店の人に渡しておかなければいけない。

「よし、早いけどいくか」

これまたブランド物の革靴を履き、車に乗る。まずはレストランに向けて出発した。レストランまでは30分、お店の人に花束を渡して、ハッピーバースデーの合図とともに花束を持ってきてもらうことをお願いした。今度は彼女を迎えに行かなきゃいけない。再び車を走らせること15分、真雪の家に到着した。

「真雪、迎えに来たよ~」

「悟、ありがとう。ちょっと時間には早くない?」

「今日のことが楽しみでね、さぁ乗って」

「うん」

カジュアルなスタイルの真雪をのせてレストランに向かう。頭の中は真雪の喜ぶ顔でいっぱいだ。レストランについてリザーブ席に案内してもらう。そして、コース料理が次々と出てきて最後のデザートにケーキが出てくる。そのケーキに乗せられたチョコレートの板にクリームで書かれた文字を見て、真雪は驚いた顔をする。

「真雪、誕生日おめでとう! ハッピーバースデー!!」

俺の言葉と共に店員さんが花束を持ってくる。俺はそれを受けとり、真雪に渡そうとした。そこで、真雪が一言呟いた。

「今日、会ってから真雪、真雪、って呼んでるけど誰、その女。私は紗雪だけど、まさか浮気してないわよね。私の誕生日、今日じゃないし。ねぇ、どうなの?」

お祝いムードだった店内の空気が、そして俺の思考も凍り付いた。

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