再会

 恋火は銀の鎖で繋がれ十字架に磔になっている風楽を見上げた。

「楽しそうだね」

「どこがですか!?」

 予想通りの反応に、恋火は思わず笑みをこぼす。

 風楽は恋火の手の届かない高さで磔にされている。

「早く下りてきてよ」

「自分で下りられるならとっくに下りてますよ」

「……えっ?」

「えっ?」

「困ったな。どうしよう」

「早く助けてください」

「どうやって?」

「……」

「この刀を投げつけてみようか。運よく鎖だけ切れるかも」

「頭蓋骨に突き刺さる予感しかしないのでやめてください」

 冗談ではなく、このままでは囚われている風楽をただ見ていることしかできない。

 その時、風楽の体に巻きついている鎖が白い光を放った。

「うわっ」

 短い叫びとともに風楽が落下してきた。何かの力が働いて鎖が解かれたようだ。恋火は急いで十字架の下に移動し、彼の体を受け止めた。そのまま床に倒れ込む。

「いたたたたた」

 恋火の上になっている風楽が嘘っぽく呟いた。どう考えても恋火のほうが痛い。

「風楽」

「はい」

「どいて」

「ちょっと体が痛くて」

「早く」

「もう少しこのままでいさせてください」

「蹴るよ」

 恋火の警告を受け、風楽は苦笑いしながらようやく体を起こした。

 その場に座ったまま、二人は見つめ合う。

「たっぷり説教しなきゃね」

 恋火の言葉に風楽は舌をぺろっと出した。

「勝手なことして」

 そう言いながら、恋火は風楽に抱きついた。

 彼の温もりを、匂いを、感じる。

「恋火さん」

「なに?」

「ありがとうございます」

「……」

「恋火さんなら来てくれると信じてました」

「ずいぶん無謀な賭けだね」

「でもその賭け、勝ったみたいです」

「……約束して」

「約束?」

「もうこんなことしないって。私の前から離れないって」

「はい。約束します」

 恋火は抱いていた風楽から体を離す。

 すぐ近くで、彼の碧の瞳を見つめた。

「会いたかった」

「僕もです」

 二人はそっと口づけを交わした。



「戻らないと」

「はい」

「二人が盾になってくれた」

「二人?」

「水羽と愛地」

「彼らも来てくれたんですね」

「あとでお礼を言うように」

「はい」

「行こう」

 恋火は風楽の手を引いて立ち上がった。

 元来た方向を見る。

 そちらから、一人の白いローブを着た人間が歩いてきた。

 くしゃくしゃの癖毛。中途半端に生えた無精ひげ。

 レッドだ。

「彼らは無事だ」

 レッドが言った。

 恋火はそれを聞いて胸を撫で下ろす。とても心配していた。

 しかし、レッドは浮かない顔をしている。普段のあっけらかんとした態度はない。

「きみたちにお願いがある」

 その彼の顔には悲壮感すら漂っていた。

「なに?」

「■■を止めてほしい」

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