自分を高めるということ

僕は勉強が苦手だ。

絵も下手だし、音痴だ。

こんな自分が嫌になる。


町の歯医者さん、白瀬先生なら僕を成長させてくれるはずだ。

僕は先生に相談することにした。


「どうしたら先生のように立派な大人になれるかな」


先生がおどろく。


「どうしたんだい?」


僕がわけを話すと、はははと先生は笑う。


「君はいいところに気がついたようだね。自分を高めるためには、学問を追求して、芸術を大切にすることが必要だと昔の偉い人が言っていたのだよ」


やはり先生はすごい。


「きたまえ」


僕が院長室にまねかれると、本棚にたくさんの本とノートがあった。

歯周病学、口腔外科学、冠橋義歯補綴学。

読み方さえ分からない。


その横には、レオナルド・ダ・ヴィンチやゴッホなどの絵画集が並んでいる。


さらにそのとなりには膨大なノートが綺麗に整理されていた。


これが学問と芸術を追求するということなんだ。

こうして先生は自分を高めてきたんだろう。

だから先生は立派なんだ。


そう思いながら僕は、本棚にある一冊のノートを手に取った。

すると先生が慌てて叫んだんだ。


「待つんだ!それはいけない!早く元あった場所に戻すんだ」


ごめんなさい!


僕が急いでノートを本棚に戻そうとすると、ノートのページが破れてしまった。

大変だ!

先生が追求した学問と芸術に傷をつけてしまった。

やはり破れたページにはたくさんの数字が書いている。


あおい 080-1234-5678

みう  080-9876-5432

・   ・

・   ・

・   ・


さすが先生だ。

僕もノートをとることから始めよう。


〜ノートの数だけ自分が高まるとは限らない〜

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る