Ⅴ
翔也は、もう一度横を通り抜け、歩き続けた
× × ×
駅前の書店でいくつかライトノベルと漫画本を選び、それをレジで支払いを済ませて、近くの学習スペースで休憩をすることにした。
ここは、勉強をする学生や本を読む人などが自由に利用できる場所であり、この季節、ただで冷房を貸し切れる場所は、ここと図書館くらいである。
(最新刊が今月、結構出たから使いすぎたか?)
ここで読むのはそう恥ずかしくはない。この学習スペースには、書店のほかにも図書館を担っている。だから、漫画や小説を読みに来る子供や大人も多いのである。そして、この場所は、二階にあり、バスや、商業施設が一望できる場所でもある。
ところが、夏休み前の六月終わりごろになって、梅雨も終わり、暑さが増す外とは違い、案外、この空間は人が多い。
(おいおい……ひと、多すぎるだろ……)
建物のガラス張りの窓からは、翔也に向かって太陽の光に晒される。
太陽は少しずつ傾き始めたが、この気温上昇の暑さは、汗が出て、べとべとして気持ち悪いくらいである。そして、日本の南にあるこの地域は、北海道に比べて高層ビルが立ち並ぶ、東京と同じくらいの暑さだ。
だが、この際、部活がない時間はこういった時間を有効活用するのが一番である。
(快適で楽でいいな……)
すると、
「あ、翔君?」
この静かな空間の中でよく通る声だった。本に集中していたはずだったのにその耳に届いたのは、集中できていないという証拠である。
今日はなんとなく珍しい人物にあうもんだなと思いきや、有馬三咲がそこにいた。おそらく、友達と一階のスタバに行ったついでに、ここに上がってきたのだろうと、涼しそうな格好で翔也の元へとやって来る。
「あ、ああ……」
「何しているの?」
「そこで買った本を読んでいるだけだよ。家にいると、クーラー効いてないしな。涼しい、ここに避難をしてきたんだ」
「あ、そういうわけね」
翔也が軽く答えると、三咲はニコニコと笑顔を浮かべている。
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