Ⅲ
「そうかい。でも、せめて他校の同級生であるクラスメイトと仲良くするのも大事だぞ」
「うん。分かってる」
そう答えて、夏海は次の巻を読み始める。夏海が読んでいる漫画本も途中まで来たというところだ。読むペースが速いのか、次から次へとページ数が捲られていく。
(どんだけ早いんだよ。もしかして、絵しか見ていないんじゃないのか? ほら、子供は絵だけで大体の流れを読む奴いるからな)
翔也はイヤホンを外して、スマホをテーブルに置き、コップを持って、冷蔵庫へ向かうと、麦茶のお代わりをする。
(冷たいな。夏直前は、家でダラダラするのが一番だな。ほんと、夏は魔物が住んでいるし、分からないと言われている。高校野球みたいに)
追加で、氷を入れる。
冷蔵庫の中身を見ると、昨日の残りと、今朝の作り置きが入っている。きっと、これが今日の夕食で出されるのであろうと、翔也は思った。
学生兼主婦の仕事をしている夏海は、家事スペックが高い。
(将来、絶対、いいお嫁さんになるだろうな。顔立ちもいいし。でも、俺は認めんぞ。俺以下の男なんて絶対に認めないからな。それに例え、上だったとしても、ま、権力的に負けるだろうな……)
とりあえず、夏海の邪魔にならないように冷蔵庫の中から何か食べれそうなものを探すが見つからない。
(ちっ……。全部使ってやがる)
「夏海、何かないか?」
そう言って、夏海はむーっと唸りながらも渋々と立ち上がって、冷蔵庫の中をあさり、スーパーで買って置いて、使いかけの加工肉を翔也に渡す。
翔也はそれを受け取り、ラップを開けて、丸かじりをした。
(うん。意外とうまいな)
× × ×
すでに六月も終わりに近づき、セミの鳴き声が一段とうるさくなる。
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