Ⅵ
首を傾げる二葉。
すると、ベンチで座って眠りかぶっている翔也を発見する。
(翔ちゃんはいるんだ。でも、北村君の姿も見えないな……。どこに行ったんだろう。あの二人……)
二葉は翔也がいるベンチまで行くと、隣に座る。
座っている間に少しずつ時間が過ぎていく。
「あの……翔ちゃん?」
二葉は、翔也の左肩を掴んで体を揺する。
「ん? ああ、二葉か……。どうしたんだ?」
「そ、その……二人がいないんだけど?」
「はぁ? 二人がいない?」
そう言われて、翔也はあたりを見渡す。
二葉の言う通り、達巳と唯の姿が見えない。
「本当だな。あいつらの姿がないな」
二葉は心配そうに翔也の方を見て、袖を握る。
翔也は達巳に電話を掛ける。
『はい、はーい』
達巳は元気よく電話に出てきた。
「お前、今、どこにいるんだ? 後、竹下も……。二葉が不安がっているぞ!」
『あー、なんだ。そんなことか……』
「そんなことって、お前な……」
翔也はため息がつきそうで、嫌な表情を少しする。
『まぁ、こっちもこっちで色々と、トラブルがあってな。後の事はよろしく。なーに、お前の事だから、二葉ちゃんの事、大事にできるだろ?』
「……」
『じゃ、また、後で連絡するからな』
そう言い残して、達巳は電話を切った。
(あの野郎、計ってやがったな! 俺と二葉が二人っきりになるように考えてただろう。と、なると、おそらく竹下もグルだな……)
スマホをポケットに直しながら、頭の中で考える。
「翔ちゃん?」
二葉が話しかける。
「どうした?」
「これからどうする?」
「どうするって言ってもな……。とりあえず、山を下りるか?」
「うん……」
二葉は小さく頷く。
二人は外の階段を下りて、元来た道を引き返す。
一方、その頃——
「動いたぞ」
男が二人の動きを確認すると、もう一人の女に声を掛けた。
「これ、大丈夫なの?」
女は不安そうに言った。
「大丈夫だって、俺たちはただ見守るだけ、そうだろ?」
「それはそうだけど……」
男女二人は、達巳と唯だった。
達巳が持ってきた変装の小道具である眼鏡とマスクをつけて、二人の様子を窺う。
「さーて、ここからが本番だぞ。あまりがっかりさせるなよ、翔也」
「あなた、もし、二葉に何かがあったら許さないわよ」
「分かってる。分かっているって……」
達巳と唯は、翔也と二葉の二人から約二十メートル後ろを歩く。
ここは隠れる場所もなく、距離を置かないと難しい。
「何話しているのか聞こえないな。もう少し近づいてみるか?」
「危ないんじゃないかしら? これくらいの距離を保ちながらもう少ししたところで、近づきましょう」
と、唯は提案する。
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