夢遊病者たち

吉田さつき

第1話

ドーン…。

タタンッ、タタタタッ…。


分隊が突入した家屋で爆発が起こり、同時に機銃音が響きわたる。周囲を警戒していた隊員たちはなすすべもなく薙ぎ払われ、残りは大地にひれ伏した。銃撃をほぼ半周から受けている。罠だったのだ。

「くそったれ!」

「応戦しろ!」

「ビッグブラザー!ビッグブラザー!こちらミニラブ!敵襲をうけている!」

第11小隊は応射を開始した。戦端は予想とは逆の方角で始まり、突入チームを圧倒する形で推移する。

「ビッグブラザー!応答しろ!こちらミニラブ!アンブッシュされッ…」

「ケニーがやられた!」

「ウーリ、ケニーの“アイフォン”で本部と連絡をつけろ!畜生め、包囲されているぞ」

ウーリと呼ばれた兵士は這いながら戦友の傍らまで近づく。ケニーは頭部を大きく割られ、その内部をぶちまけていた。ウーリは一瞬なにかを呟いて、すぐにポータブルとは言い難い武骨な見た目から隊員たちに“アイフォン”と呼ばれている機器をケニーの手からもぎ取り、戦術管制官と連絡をつけようとする。戦友の脳漿でぬめる“アイフォン”の画面を操作しようとした彼は小隊長に怒鳴った。

「小隊長、だめです!“アイフォン“もやられています!」

小隊長と呼ばれた兵士は罵りの言葉を抑えながら怒鳴りかえす。

「奴のバックパックから予備をだせ!ただちに起動しろ!」

ウーリ、絶対にやられるなよという言葉を飲み込んだ小隊長—マーティン・ババイエフは残存する兵士たちを叱りつけるように家屋から遠ざかるよう指示する。炎上する家屋に照らされたままではいい的だ。何とかしなければいけない。

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