知らないロマンチック
いとかくし
恋心がないという事
私は恋をしたことが無い。
恋という感情がわからない。
「私いとの事好きなって言ってた人知ってるよ」
絶賛三角関係から一人が不登校なんていう状況にある友人は言った。
「頭おかしかったんでしょ」
「そうな……のかもね」
否定をすれば、私の顔を見てそう答えた。
恋がわからなかった。どうしてもわからなかった。
「恋ってどんなもの?」
「ん~、よくわからないけど、ふとした時に思い出すんだよ。好きな人の事」
「考えないと何も思いつかないから……ないな」
「いとってほんと鈍いよね」
彼女は笑う。自分に告白してきた男を振って、振った男の親友と付き合っている。振られた男は二学期から顔を出していない。
同じバンドを組んでいる以上、話されていなくても空気のどこからか自分は気付いていた。そういうのには気付くというのに、どうも恋愛感情には鈍かったのだ。
顔は良くない。容姿でいじめられた経験を小学校でして、中学でも自分のコンプレックスを陰で笑われることもあった。そんな私の事を好きになってくれる人もいたらしい。傷ついた自分を見せたくなくて作った張りぼての「無神経で元気なうるさい女らしくない性格」を張り付けて今日も生きている。
こんな悩みを打ち明けたことはない。誰も知らないTwitterの愚痴アカでだけぽつぽつと話していた。
小学校で二回、告白された。一回目、仲が良いと思っていた問題児の一人。一緒にテニスをしたり、家の猫を触らせてもらったり。友達はみんな怖がっていたけど、全然悪い奴じゃないよって私は笑っていたきがする。告白されて、答えられないまま、問題を起こして転校してしまった。
二回目は、同じ委員会の人。私はそれを友愛にしかとらえず、意図せず彼を傷つけていた。学年中に広まっていつの間にか元カノと笑われていた。
人の変化には敏感なんだ。空気の変化にも敏感だ。この人はあの人が好きなんだなとか、あの人はその人が嫌いだとか。そこに自分が加わると、恋愛のことが一切わからなかった。
友人が言った自分の事を好きだった人がわからなかった。
男も女も関係なしに、仲のいい人、話してて楽しい人、それくらいの意識しかない。
世界には神の愛、友愛・家族愛、性愛があるらしい。
私は一つしか知らなかったのだ。理解ができなかった。恋愛に少しの嫌悪さえ感じる程、私はその感情がわからないのだ。
だから、特別な友愛を持つ友人の桜を私は好きなんだとばかり思っている。
普通じゃない事がおかしい。母親はいつかそうなると信じてる、いつか孫を連れてくると信じている。
でも、私が今まで一番強く「愛」を抱いたのはその桜だけで、私はそれが恋か何かだと信じている。信じている。信じている。
本当はそれが恋じゃないとしたら恋って何だろうか。
未知の彼方。好きな人がいて当然らしいこの世の中。
小学校の時からわからずじまい。恋バナにはついていけなくて、学年で人気な人の名前を挙げて愛想笑い。
誰か私に「恋」を教えてください。
知らないわからないが普通だと思っていた。
急に降ってくるものなんだろうか。あの少女漫画にあったのは話を盛ったとかじゃなくて本当にそうなのだろうか。
好きって気持ちは、なんなんだろう。
桜からの友チョコに喜んで、それが他の人よりうれしいのは恋ではないのだろうか?これが恋ならふと思い出すのが普通なのだろうか。
わからない。
未知の
ロマンチック
知らないロマンチック いとかくし @ito25kakusi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。知らないロマンチックの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ありふれた大学生の日記最新/花空
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 260話
令和テレフォンクラブ最新/名▓し
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 7話
書きたいときに書くだけのメモ的エッセイ/ようひ
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 66話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます