愛の消えた街

禁煙大佐

第1話 消失

(愛って何だろう……)


 夕食中に目の前でイチャイチャしている両親を見てレイモンドは思う。


「ん? どうした、レイ」

「いや、何でもないよ」

「何か悩み事? あんまり悩んでるとハゲちゃうわよ?」

「まだ12歳なのにハゲるか!? 父さんじゃあるまいし!」

「ちょっ、レイッ!? 父さんまだ30過ぎたとこなんだよ!?」

 

 レイモンドは話をはぐらかし、食事を終えて自室に戻った。そして、考えても仕方無いと今日は早々に寝ることにした。


********************


 翌日、レイモンドが朝食を食べに降りたとき、ふと違和感を覚えた。

 

「行ってらっしゃい」

「あぁ、行ってくる」


 いつもの父親が仕事に行くときの挨拶ではあるが、行ってらっしゃいのキスも無く二人とも無表情なのが気になった。

 

(喧嘩でもしたのかな?)

 

 レイモンドはそう思いつつ朝食を終え、学校へ行こうと母親に声をかける。

 

「母さん、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 父親の時と同じように無表情で送り出された。

 

(今日は二人とも変だな)


 レイモンドは不思議に思うが、気にせず学校へ向かうことにする。――しかし、道中でも同じように違和感を感じることになる。

 いつも仲の良い武器屋の夫婦はレイモンドの両親と同じように無表情で開店の準備をしている。防具屋の夫婦は喧嘩をしているらしい。商人の夫婦はいつもと同じようにニコニコ話している。


(何かみんな変な感じがするなぁ……)


 レイモンドはそう思いつつも、学校へ到着した。

 しかし、学校内も殺伐とした感じがする。

 

「おはよ」

 

 武器屋の息子がいたので挨拶し、今日の違和感について聞いてみた。

 

「レイか、おはよ」

「今朝、お前のとこのお父さんとお母さんいつもと違う感じとかしなかった?」

「いや、いつもと変わらんと思うけど?」

「……そっか」

 

 子供が言うのだから、特に変わったことは無いんだろうと思うことにして、教室に向かった。

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