ある日、桃太郎に転生した。

無限飛行

第1話

「む、ここは、何処だ?」

「キー《鬼ヶ島なんだけど?》」


「お前、鳥?」

「キー《お供のキジだわ。桃太郎、どうしの?突発性痴呆症?》」


「うむ、奥さんの誕生日と結婚記念日を忘れてな。『忘れた、何時だっけ?でへっ』って言ったら、バットで殴られてな。桃太郎に転生したらしい」

「キー《難儀だったんだわ》」


「うむ、ところで鬼共はどうした?」

「キー《忘れたの?犬と猿と金太郎と熊と浦島太郎と亀が、肉壁になって鬼からあたし達を守ってるの。その間に、私達はのんびり昼食を取っているのよ》」


「犬と猿は分かるが、金太郎?浦島太郎?」

「キー《きび団子で洗脳したんでしょ?忘れたの?》」


「ああ、生意気に借りた金返せって、二人で来たから、洗脳きび団子を口に放り込んでやったんだったな」

「キー《そうよ、それで肉壁になれって指示したんじゃない》」


「うむ、馬鹿な奴らだ。僅かな小銭の為に、全てを失うとはな」

「キー《いつも思うけど、あんた、最低だわ》」


「ところで、今日の昼食はなんだ?」

「キー《慌てて来たから、有るものしかないわ。ほら、これよ》」


「きび団子、マヨネーズ、納豆、ニラ、コーラ、おい!これでどうしようというんだ?」

「キー《仕方がないじゃない。これしかないんだから》」


「コーラはどうするんだ!今は冬だぞ?!」

「キー《まあ、見てなさい。先ず、ニラをみじん切りし、軽く茹でます》」


「うむ、それから?」

「キー《納豆とマヨネーズを、よく混ぜます》」


「……それから?」

「キー《茹でたニラのみじん切りを、きび団子にかけます》」


「………」

「キー《その間に、コーラを煮立てます》」


「炭酸が抜けてしまうが?」

「キー《いいのよ、それで。そして、先ほどの納豆マヨネーズ和えを、ニラの上にかけるの》」


「凄い臭いだ?!」

「キー《はい、できた。きび団子ニラ納豆マヨネーズ和えよ。ホットコーラを添えてね》」


「待て、これを食うのか?俺が?」

「キー《そうよ、何の為に作ったと思ってるの。これが貴方の昼食よ♪》」


「…食う……ぱくっ」

「キー《美味しい?》」


「………」

「キー《何とか言ってよ。せっかく作ったのに》」


「なんと表現したらよいか」

「キー《何よ、はっきりいいなよ》」


「異次元」

「キー《わかんないわよ、それじゃ!》」


「自転車で走っていたら、上から植木鉢が落ちてくるので、避けようとハンドルをかたむけたら、ブルドックの尻尾を踏んで、噛まれそうなので、逃げたら、マンホールの穴に落ちたみたいな?」

「キー《もっとわかんないわよ!って、どうやってブルドックの短い尻尾を踏むのよ?!》」


「む、何だ?犬が戻って来た?」

「キー《あらかた、財産は奪ったからそろそろ逃げよう、だって》」


「待て、この匂いは?」

「キー《カレーの匂いだわ》」


「どういう事だ?」

「キー《あ、向こうで鬼達と金太郎と浦島太郎が、鍋を囲んで酒盛りやってる》」


「何だと?何故、金太郎と浦島太郎は鬼達と鍋を囲んでる?」

「キー《あーっ、多分、桃太郎の指示のせいだわ》」


「は?俺の指示??」

「キー《桃太郎、肉壁の指示しか出してない。相手を攻撃する指示じゃないんだわ》」


「守る指示を出してただろう?」

「キー《相手が攻撃してくれば、守るだろうけど、そうでなければ、自分達で其れなりに対応するんだわ》」


「くそ、どうすればいい?俺も、カレーが食いたい」

「キー《素直に混ざればいいのでは?》」


「だが、手ぶらでは不味いだろう」

「キー《ニラが残ってるから、これを持っていくと良いだわ》」


「そうか、ニラカレーを提案すれば、仲間にして貰えるか!」

「キー《なら、行くのだわ》」


「よし、やー、やー、桃太郎という者です。ちょうどニラが余ってまして、ニラカレーでもどーかなーなんて思い、お持ちしました。どうか、仲間に入ってもよろしいか?」

「キー《いいって。良かったね、桃太郎》」


「よし、さっそくニラを鍋に追加♪」

「キー《ちょうど良いタイミングなんだわ》」


「む、おお、ニラのパンチの効いた、良いカレーの匂いが。まさに、スタミナカレー!」

「キー《カレーの匂いで誤魔化してるけど、結構、好き嫌い出るタイプかな?》」


「よし!出来たぞ。米を盛るぞ」

「キー《結局、桃太郎、自分で皆に盛り付けてるわ》」


「うおお、旨い。ニラパワー!!」

「キー《皆、呆れてるんだわ》」


「やっぱり、カレーが一番!」

「キー《そういえば、何か忘れてない?》」


「忘れてる?何をだ?」

「キー《洗脳きび団子の効果は、一時間なのよ》」


「…………」

「キー《ねぇ、周りの人達、目つき変わってきてるよね?》」


「ちょうど、トイレに行きたかったんだ。キジ、後は頼んだ」

「キー《言っとくけど、あたしの洗脳も解けてるんだけど?》」


「あ、将棋の藤井君が、将棋板抱えて歩いてる!」

「キー《あんたねぇ、あんな重たい将棋板なんか、どうやって抱えるのよ》」


「あ、チーム❪ロコ▪ソラーレ❫」

「キー《カーリング女子は北京だよ!皆、コイツを丸裸にして、スマキにして海に放り込んじまえ!》」




「ぎゃああ、反省するから助けてーっ!」

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ある日、桃太郎に転生した。 無限飛行 @mugenhikou

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