2話
バレンタインの翌日、私はいつも通り登校して、教室の机に向かうと、昨日チョコを渡した男の子と目が合った。
軽く会釈すると、今度は話しかけてきた。
「昨日はありがとう。良かったらLINE交換しない?」
予想外の出来事が起きてしまった。感謝をされるのはともかく、連絡先交換に至るとは。
「いえいえ。私でよければ。」
QRコードを読み込んでもらうと、下の名前春奈って言うんだねと言って喜びを隠せない様子が小さい子供みたいと思った。
こちらも追加して、[よろしく]とメッセージを送ると、既読がついて、よろしくのスタンプが送られた。
「あの、」
その声とともに予鈴が鳴ったので聞き取れず、お互い自席へ着席した。さくらの方へ視線を送ると、なにか言いたげそうにこちらを見てニヤニヤしていた。
朝のホームルームが終わり、教室移動のため教科書等を持って廊下に出ると、さくらがニヤニヤしたまま話しかけてきた。
「春奈さん朝から熱いですね〜」
「ちょっとさくらったら」
「クラスの中じゃ、春菜と山口くんが付き合ってるって噂だよ」
「そんなつもりじゃないのに」
好きとか嫌いとか付き合うとか付き合わないとか意識していなかった。まだ友達ですら怪しいのに。
山口くんのほうに視線を向けると、ひとりぼっちで、寂しそうに歩いていた。
あれ、山口くんっていつも誰と一緒にいるんだっけ
授業が終わり、さくらと帰ろうとしたが、「今日は急ぎの用事があるから」と言って先に帰られてしまった。
「あの!鈴木さん!」
「...ふぇ?」
後ろから声をかけられたので、振り向くと山口くんがそこには立っていた。
「どうしたの?てか春奈でいいよ」
「良かったら今日一緒に帰りませんか」
これってもしかして放課後デートのお誘い!?男の子から一緒に帰ろうなど中学以来言われたことがなかったのでつい期待してしまう私。
「いいよ」
「ありがとう」
私は自転車通学なので、自転車を押し歩きながら、山口くんの隣を歩く。
「そういえば、山口くんの下の名前ってなんていうの?」
「侑真。」
「へ〜いい名前じゃん」
「そうかな?」
「私が男の子だったらその名前嬉しいよ」
「うん」
「春奈さんもいい名前だと思うよ」
「ありがとう」
それから、名前の話だけじゃなく、好きな食べ物の話、何中出身なのか、など話して10分がたった。気づくと、住宅街まで着いてきてしまった。通ったことのない道を来てしまったから帰れるか心配だ。
少し歩くと、1軒の家の前で侑真くんは立ち止まった。もしかして家までついて行っちゃった?
「じゃあ、僕の家ここだからまた明日ね」
「うん、また明日」
侑真くんを家まで送って、帰ろうとすると、すっかり辺りは暗くなって、来た道がわからなくなっていた。
仕方なくスマホの地図アプリを見ながら、家まで帰った。
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