僕たちの青春。

Sさん

1話

今日も何一つ変わったことはなく、いつも通り僕は、帰りのHRが終わるとロッカーの中を確認して下校する…




…ん?


階段を降りようとした時、後ろから肩を叩かれた

「…あの、これ、もらってください」


振り向くと僕より背が10cm以上も低い同じクラスの女子が市販のチョコを差し出していた。

「ありがとう」といい、僕はありがたく受け取った。

特に話すこともなかったのか、彼女はその場から瞬時に立ち去っていった。



そういえば、今日はバレンタインということを忘れていた。世の中の女性が友達や同僚と手作りのチョコなどのお菓子を送り合うイベント。または、女性が好きな男性あるいは恋人に贈り物をする日だ。


僕が女の子からチョコをもらうのなんて初めてだ。あの子がくれたのは、チョコが余ってしまったからなのだろうか。それとも、あの子の優しさ…?



もらったチョコをズボンのポケットに入れて、校舎を出て校門へと向かう。


…それとも、僕に好意がある、とか?

いや、それはないだろう。

そもそも、高校に入ってから女子とは話したことがなかったし、陰キャでぼっちで、イケメンでもないし、特別頭が良うということもなく、何も取り柄がないこの僕、山口侑真に魅力があるわけがない。


別に好きな人や恋人がいなくたって寂しいとは思わないし、モテなくても十分だ。友達がいればそれでいいと思っている。でも、もし仮に彼女ができたらそれはそれで幸せだと思う。



…それよりチョコをもらったから、何かお礼をしないといけないのか。

あ、そもそも相手の顔よく覚えてないから誰にもらったかわからない。


さっきのことを思い出しながら歩いていると、あっという間に家に着いてしまった。僕の家は、学校から徒歩10分。ぼーっとしながら歩いているだけでもすぐに着いてしまう距離である。


「ただいまー」

玄関のドアを開けて家に入る。


今日はおかえりという声がしなかったので、リビングに立ち入って見ると、案の定誰もいなかった。


僕のお父さんとお母さんは共働きで、朝早くから仕事へ行き、夜まで帰ってこない。ちなみに2人は職場は違うが、一応公務員である。


2階の自分の部屋に入ると、上着を脱ぎハンガーにかけた。そして暖房をつける。


「ったぁ!」

ベットにダイブしそのまま数分動かなかった。


「女の子からチョコもらった、夢じゃないよな?」

ポケットに手を入れ、中の物を出すと、キットカットのチョコレートがあった。


「うおおおぉ!! 」

嬉しさのあまり喜びを抑えられない…!女の子から贈り物なんて初めてだし、ワンチャンモテ期来るんじゃね…?


…もしかして、あの子は僕に興味を持ってくれてる…?


僕は、翌日になるまで嬉しさなどで浮かれていた。





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