マカロンが嫌いだなんて言えなくて。

姫森なつな

Aimi

─ 朝は子鳥のさえずりを聞いて目が覚めて、朝食はクロワッサンを食べ、午前中はピアノ、午後はヴァイオリンのレッスン、3時のおやつはピンク色のストロベリー味のマカロンを食べる……これが世間から見た私のイメージ。

一体いつまで私はこのイメージを保って生きていかないといけないのだろう。


─ 午後9時 ─ 生配信中


Aimi「皆、今日も私の配信に遊びに来てくれて本当にありがとう!!お肌に悪いから今日はもう寝ようと思います」


“ 今日もAimiちゃん可愛かったよ!! “

“ お肌のためにもう寝ちゃうなんて夜更かしする私とは違うなぁ、さすがAimiちゃん!! “

“ Aimiちゃん今日も配信ありがとう!! “

“ おやすみなさい!Aimiちゃん “


Aimi「皆、今日も沢山コメントありがとう!!次は明後日の夜8時から生配信したいと思います!それではまたね、おやすみなさい」


Aimiがライブ配信を切るボタンを押そうとした時、ひとつのコメントが目に入った。


“ Aimiちゃんは私の憧れです!! “


Aimi「…うっ」


Aimiはいつもより少し力を込め、'ライブ配信終了 ' のボタンを押した。


Aimi「…私が皆の憧れ……」


ピンクをテーマにしたアイメイクを落とし、ピンク色の毛布が敷かれたベットに入る。

ベットから見える机の上に置かれたピンク色のリボンをしたウサギのぬいぐるみがこちらを見て、少し睨んでいるように見えた。


Aimi「…なんか今日は調子悪いな、早く寝ないと…悪夢でも見ちゃいそうだわ」


?「…一体いつまで演じる気だ」

Aimi「…え…?なに…誰、誰の声なの…?」

?「…お前はいつまで他人の色で生きるつもりなんだ」

Aimi「…なに、誰なの…!!」

?「…自分に正直にならないと自分が分からなくなるぞ」

Aimi「なに…!誰なのよ…!!……っっ!!

………びっくりした…夢か……」


窓の外から小鳥が鳴いている。


Aimi「…もう朝か。

……自分に正直になるってなによ。

私は…私はこの生活が幸せなんだから…!!

私はいつまでも皆の憧れでいなきゃいけないんだから…!!」


Aimiはドレッサーに収納されているピンク色のアイシャドウパレットを取りだしピンクをイメージしたアイメイクをし始めた。


«続く»

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