第8話:野菜も取りましょう


 つまみコールがうるさい。

 なのでとりあえず簡単かつすぐに出来るものを準備する。


 冷蔵庫からキャベツを取り出しさっと洗ってキッチンペーパーで水を拭き取り、駄菓子の酢昆布を取り出す。

 それを細かく切って手でちぎったキャベツにまぶして軽く揉んでおく。

 さらに冷蔵庫からマヨネーズと味噌を取り出し混ぜて小皿に入れて出来上がり。



 「取りあえずこれでも食ってろ、『マジカルキャベツ』だ!」


 

 既に野球拳で出してはいけないものを出してしまっている友広と忠司の前にそれを置く。



 「なんだ、キャベツではないか?」


 「お通しか?」



 「いいから食ってみろ、ああ、そこの横にあるタレつけるんだぞ」


 私に言われて友広と忠司はキャベツをつまみ横にある味噌マヨネーズに着けて口に入れる。



 「「!?」」



 二人とも驚き更にキャベツを口に運ぶ。


 「何それ美味しいの?」


 「あらぁ、丁度いいわね口の中が寂しかったのよぉ」



 「って、お前ら!! なに下着姿になってんだよ!?」



 「ああ、姉さまたちなんだかんだ言って野球拳で負けちゃいましたからねぇ。下着どまりですけど」


 この状況を説明しながらレイムがすっとカクテルを差し出す。

 こいつの作るカクテルは確かに美味い。


 私はこの状況に落ち着くためにそれを取って一気にあおる。



 「ぷはぁっ! これはブルーベリーとピーチか!?」


 「ご名答、流石です」



 言いながらレイムをよく見ると裸エプロンになっていやがる。



 「おいこらちょっとマテ、なんで貴様が裸エプロンなのだ?」


 「大丈夫です、まだパンツははぎとられていません。ギリギリで姉さまたちに野球拳で勝ちました」


 「そうじゃないだろそうじゃ! と言うか、お前ただでさえ男の娘の事を内緒なのにそんな恰好で大丈夫か?」


 「ただの裸エプロンです。これに欲情する男子は変態ですよ」



 いや、貴様の容姿が問題だ。

 服によっては女に見えてしまうからな……


 私はこれ以上こいつを見ていると問題になりそうなので台所に戻る。

 そして続けざまに冷蔵庫から牛肉を買った時にサービスでもらえる無料の牛脂を取り出す。

 もやし、キャベツ、そして玉ねぎ準備してまずは牛脂をフライパンへ。

 全体的に脂がまわり熱されたらまずは玉ねぎを投入する。



 じゅうぅぅぅっ!  


 

 牛脂と玉ねぎの焦げるいい匂いがする。

 牛肉と玉ねぎはとても相性がいい。

 なので牛脂と玉ねぎも同じだ。

 少し焦げ目がついたらキャベツ、もやしを投入して軽く塩コショウ。

 ざっと炒めて少ししんなりしたら最後に焼き肉のたれを少量と玉ねぎサラダドレッシングを投入。



 じゅうううぅぅぅぅぅっ!!



 さらにいい香りが立ち込める。

 お皿にそれを移し、最後に万能ねぎを少し切って振りかける。



 「貴様ら野菜も食え、『ステルスステーキ野菜炒め』だ!!」


 

 とん!


 テーブルに置くと全員がそれを見る。



 「た、確かにステーキの様な香りがするが肉が見えん!」


 「もしかして一番下にあるのか?」



 言いながらみんな箸を出す。

 しかし肉などひと欠片も無い。

 が、口に入れて驚く。



 「うおっ! ステーキ味だ!!」


 「なんで牛肉の風味がするんだ?」


 「これ、どんどん行けてしまう!!」



 野菜不足であろうこいつらにとりあえず野菜を食わせる。

 牛脂の味と香りにステーキの様な味付けが酒にも合う。

 こいつらは燃える水をカパカパと飲みながらそれを食う。


 これはもちろん家計にも優しい。

 近所のスーパーでもやし一袋十八円(税抜き)なんだもんな。



 「callar(黙って)喰え!」



 私は次なる刺客を送り込むためにまた台所へと戻るのであった。

 

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