第7話:自分も小腹が減ったので



 奴等は私の術中にはまりすでに大量の酒を飲んでいる。



 見ればビール瓶と缶は全てに空になって床に転がっている。

 日本酒も既に数本空いている、いや一升瓶もだ。

 そしてスピリッツなどと言う危険この上ない酒の瓶すら空いている。



 ……お前ら一体どれだけ飲んでんだよ?



 そんな事を思っていると私自身も小腹が空いて来た。

 考えてみればまだ晩飯を食っていない。

 腹にたまりそして酒のつまみでは無いようなちゃんとした食事が食べたい。



 と、冷凍うどんがある事を思い出す。



 では簡単に食事をするか。


 私はフライパンに水を入れ火を付け沸かす。

 ぐつぐつと沸騰したら冷凍うどんを投入。

 ここで注意点は必ず沸騰してから冷凍うどんを入れる事だ。

 でないとコシの無いソフトうどんになってしまうからだ。

 そしてほぐれて程よく茹でられたらフライパンの余分なお湯を流す。

 サラダ油と白だしを入れて焼き始める。

 湯切りは軽めなのでお湯が多めに残っているがそれでいい。

 フライパンをゆすり全体的に絡まり乳化して来たらいりごまを少々入れてお皿に盛 りつける。

 そしてその上に沢山の万能ねぎを切った物と鰹節を振りかけて出来上がり。



 「出来た、『貧乏焼うどん』だ」



 これは学生時代に金が無くありあわせの材料で作った物だった。

 しかしこれが旨い。



 「さて食うか……」


 と、その前に喉が渇いたので近くに有ったコップに注がれたウーロン茶を手に取り口に運ぶ。



 ぶほっ!?



 一気に飲み込んだそれはしかしウーロン茶では無かった。



 「あひゃひゃひゃひゃ~、飲んだ飲んだぁ~」



 見れば みさき が笑って手を叩いている。


 くそ、一体何を飲ませた!?

 見た目はウーロン茶、しかしこの味と香りは……



 「誰だウオッカと焼酎混ぜやがったのは!?」



 「おお、このうどんうめぇ~」


 「ほんとだ、見た目と違ってちゃんと味付いてるし、鰹節と万能ねぎがいいアクセントになっている」


 「これは〆でも良いがまだまだ飲み足らないぞ!!」


 「おかわりぃ~!!」



 こいつら、私の晩飯おぉぉぉぉっ!!


 しかしこの私がウーロン茶とウーロン茶風を間違えるとは!!


 

 「はっ!? そう言えば嗅覚がおかしいぞ? こ、これは!!」



 「気付きましたか? しかしもう遅いです。部屋に充満する酒の匂いであなたの嗅覚は麻痺しているのですよ」



 なっ!?



 ごごごごごごごごぉぉぉ……



 後輩君がゆらりと立ち上がるがその姿が「エルハイミR-おっさんが異世界転生して美少女に!?‐」に登場する青髪の女神の使い、レイムの姿に変わるだと!?



 「駄目ですよ、一緒に飲まなきゃぁ~」


 みさき も立ち上がりながらその髪の色をピンクに変えていきメイド服姿に変わる。

 その姿は同作小説の同じく女神の使いライム!?



 「バ、バカな…… 貴様らは私の想像の産物のはず、確かにキャラクターのモデルではあったが、ここは現実世界だぞ!」



 「ふふふふ、この私をのけ者にして酒盛りとは笑止千万! 飲ませていただきますよ!!」



 そう言いつつライムはウイスキーを片手にロックで注ぎ始める。

 レイムもカシャカシャとカクテルを作り始める。



 「おおっ!? ライムにレイムではないか? ふむ、これは負けられん!」


 「そうだな、ではこちらも本気を出すか!」



 そういいながら 友広と忠司が上半身を脱ぎながらムキムキと筋肉を隆起させポーズをとる。



 「いやお前らは本気出すな! それと変な物まで出すんじゃない!!」



 ズボンにまで手をかけて臨戦態勢になる。



 「私は既に準備できている」


 「こら羽澄! 貴様は脱いじゃ駄目っ! 女の子がはしたない!!」


 「大丈夫、下着は脱がないから」


 「そうじゃないだろ、そうじゃ!!」



 慌てて上半身ブラジャー姿になる羽澄に上掛けをかけようとするとみねけんがすっとチョキを出す。



 「勝った」


 「いや、何に勝ったんだよ!?」


 「あらぁ、負けたら脱ぐのよ? 常識でしょ?」


 「いやライム、何お前が脱いでんだよ!?」


 メイド服のエプロンを外し艶っぽくそれを床に落とす。

 

 「じゃんけんと言ったら野球拳だろう? そして負けたら一杯飲む」



 とん。



 私の前に誠が酒の入ったコップを置く。

 くそう、いつの間に私まで巻き込まれているのだ?

 しかしじゃんけんに負けたからには飲まなければならない。


 「くっ!」


 仕方なしにそれを一気にあおる。



 「ぐはっ! なんだよこれは!?」



 飲んだそれは喉が焼けるほどの強い酒だった。



 「何、ただの水だ」

 

 「おお、そうだな、火が付く水だ」


 「いや違うだろソレ! どう考えてもテキーラか何かだ!!」


 「沸点低い。次ぎ始める」


 「あ~でもつまみも欲しいな?」



 ぐっ、こいつらぁ……



 「よ、よし、つまみ作ってやるから貴様らものこの燃える水一杯ずつ飲め!」



 するとこいつらはまるで本当に水を飲むかのようにコップを開ける。  

     


 「「「つまみぃ、つまみぃ!」」」


 つまみコールが沸き上がる

 

 くそ、こいつらぁ~。


 

 「Entendi (わかった)、貴様ら持っていやがれ!!」




 私は次なるつまみの作成に入るのだった。

 

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