居酒屋みさき ~みさきの餌付け方家飲み版~

さいとう みさき

第1話:家飲み

 「ただいまぁ……」


 「おきゃえりぃ~」


 わんわん!



 金曜の夜、仕事帰りのスーパーで割引品をゲットして帰って来ると玄関先で飼い犬と みさき(嫁) が出迎える。

 飼い犬はいつもだが みさき が出迎えとは珍しい。



 「待ってたよぉ~」


 「うっぷ! 酒くせぇ!! はっ!? この玄関に脱ぎ捨てられている靴の数々は? まさかっ!!!?」



 私は慌てて居間に行くと既に奴等が押し寄せて来ていた。



 「お~、お帰りぃ~」


 「先に始めてたぞ~」


 「やっと帰って来たか、つまみ頼む~」



 既に出来上がってるのか?



 「うへへへへへぇ~、外飲み出来ないからってみんな集まって来たぁ~。先に始めてたからつまみお願いぃ~」


 「貴様が原因か!?」



 聞いてないぞ、今日家飲みするなんて。 

 しかし既にこいつらはつまみよこせオーラを発している。


 いかん、このままでは私も飲まされる!!

 ここはつまみを出して早い所こいつらを酔い潰さなければ貴重な土日の休日が完全に潰される!



 「くっ、しかし食材がそれほどなかったはず、一体どうすれば……」


 「みんなあんたの帰って来るの待ってたんらろぉ~。早く何か食わせろぉ~」


 「「「食わせろぉ~」」」



 「お、お前らぁ!!」



 いきり立つ私に羽澄はずみ(仮名)がコップにビールを注ぎ始める。


 まずい!

 このままでは私までこいつらの飲みに付き合わされる羽目になる!



 「取りあえず駆けつけ三杯」


 「いや待て羽澄、お前らつまみが欲しいのだろう? すぐに作るから待ってろ!」


 「いや、先輩それでもまずは乾杯ですよ?」


 「後輩君(仮名)貴様、裏切ったな!?」


 「それではかんぱぁい~にゃのだぁ~」



 おいこら みさき っ!

 お前既に出来上がってあちら側か!?

 よろしい、ならば貴様も酔い潰しちゃる!!



 がっ!


 ぐびっ!



 「ぷっぱーっ! 確かにこの最初の一杯が一番うまい!! って、羽澄注ぐなよ、私はつまみ作るんだから!!」


 「じゃあ早く何か食べさせて。餃子も希望ね」


 この餃子底なし女子め!

 しかしこれで連続飲みは回避できた。

 さあ、こいつらが酒をどんどん飲むつまみを出してやる!!



 私は手を洗いエプロンをかける。



 こうなったら「居酒屋みさき」の開幕だ!!


 私は先ずこいつらが飲んでいるビールを見る。

 そして簡単に出来るビールのつまみを作り出す。


 ザーサイを刻んで万能ねぎ、いりごま、そしてごま油に味の素を絡め、小鉢に盛る。

 そして最後にパセリを横に置きお通し完成。



 「喰らうが良い、『ビール加速ザーサイ』だ!」



 飲んでばかりいるこいつらの元に数個に分けたそれを投入。

 早速箸でつまみ始める連中。



 「うおっ! ごま油にザーサイうめぇ!!」


 「癖があるのにこれはビールが進む!!」


 「いかん、ビールとザーサイが止まらねぇ!!」


 「この脂っこさと塩っ気がビールを加速させるだと!?」


 

 ふふふっ、酒の席での禁じ手、油分と塩分。

 これが酒に合わないはずはない。

 しかも今飲んでいるのはビール。

 炭酸が脂っ気を流してくれるからその加速度はどんどん上がる。



 「ふふふっ、Buon appetito (召し上がれ)」



 さあ、全員酔い潰してやる!!

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