04-01 『なんでもない日常④』 Side:Ivy

 「えーっと」


ジキルと一緒に、皿の底を覗き込む。


薄い和紙の下に隠されていたのは、一通の封筒だった。


そっと開いてみると、小さな白い紙が入っている。


 「『uoyo』?何だそれ?」


紙に書かれた文字列をジキルが読み上げる。


しかし私が知る限り、『uoyo』なんて単語は存在しない筈だ。


 「どうする?あいつに聞いてみるか?」


いや、でも……

……もしかしたら。


 「大丈夫。意味が分かった」


 「意味?」


 「帰ってから説明する」


私の言葉に、ジキルは納得がいかないという表情をしながらも渋々頷いた。


すぐに哉太と光里に戻って他愛もない会話を再開する。



ふと、もう戻ってこない過去に思いを寄せる。


あの頃なら、喫茶店に入るなんて容易い事だし、友達と遊びに行く事もたまにあった。


本当に、ネット上の人々が言う通り、数ヶ月間で『酷い』変わりようだ。


でも、


 「ん?どうした?」


無意識に向いた視線に気づいたのか、ジキルが顔を上げる。


 「いや、なんでもない」


私にとっては『酷い』事ばかりでも無かったのかもしれない。


今はこの非日常を存分に堪能しよう。


そう思い、コーヒーの匂いを鼻いっぱいに吸い込んだ。


苦い匂いに混じって、少しだけ酸っぱいような匂いがする気がした。

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