01-03 『お守り⑤』  Side:Ivy

 「……指輪、ありがとう。大切にさせてもらうね。」


朝一という事もあって、会話をしていないと余計静けさが目立つ。

静寂を縫うように、私は必死に会話を繋ぐ。


 「おう。使い時と、使い方はちゃんと考えておく事をオススメする」


間違わないようにな、と彼は静かに呟いてから立ち上がった。

空は随分と明るくなっており、通りには通行人もチラホラと見える。そろそろ地下に戻るか。そう思って、私も立ち上がる。


 「ジキル、まだ寝てるかな?」


そうハイドに尋ねてみると、彼は苦笑いした。


 「アイツの事だ、寝てるだろうな」

 「私も、早く作業再開しないと」


ゆっくり伸びをして、体を伸ばす。ふと、頭にポンっと手が置かれた。


 「いつも、ありがとうな」

 「いや、別に。依頼料の為だし?」


何だか恥ずかしくなって少し刺々しい口調で返してしまう。


さっきから、指輪渡してきたり、笑ってきたり(?)、頭撫でたり、何なんだ、今日のハイドは。


もうろくに彼の顔を見ることも出来ず、じゃあ、とだけ呟いて階段を駆け下りる。

とっくに目覚めた時の震えは収まっていた。


朝の冷たい風を頬に感じる。


でもこんな一日の始まりも悪くは無いかも。私は心の底で密かにそう思った。

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