仕事はデキるクズ男

しょうゆ水

この男、どクズです。

「ほら、噛んでみる?」


 差し出された腕を静かに甘噛みする真奈。上司の突然の行動に驚いた。けれど、実はこうなりたかったという想いが抑えきれず、口いっぱいに男の筋肉を咥えながらその持ち主を見上げた。これが2人の関係の始まりだった。


 金井真奈が眼科の検査員として働き始めたのは、人手が不足していたからだ。元々は受付兼事務で入職したので、検査の知識など全く無くとても不安だった。


 スタートは最悪で、仕事が出来ない小娘をお荷物扱いする看護師たちに随分悩まされた。たくさん葛藤した結果、今では彼女たちに認められるくらいの技量になった。そして世間話も楽しく出来ている。それも全て上司のおかげ。


 佐藤啓介は検査員歴十年のそこそこベテラン。大学病院や様々な眼科的疾患に対応しているクリニックなどで経験を積み、今のクリニックに落ち着いた。眼鏡やコンタクト合わせが得意で、患者さんへの説明が丁寧かつ分かりやすく人気がある。また、検査結果と目の状態の辻褄が合うため先生からの評価も高い。そんな彼が、真奈の色々な意味での教育係になることは誰が予想出来たであろうか。


「ん…」


 喉の奥に当たりそうになり、真奈は思わず声を出した。すかさず周りにバレるだろと言わんばかりに頭を軽く鷲掴みされ、上司のほうに引き寄せられた。歯を立てないようにすぼめた唇は、すぐにでも挿入したい場所の代わりにしっかりと彼のモノを咥え込み、涎が垂れていた。


 たまらない。眼科の検査で使う暗室がこんなに役に立つとは思いもしなかった。遮光カーテンの向こうでは機械を使って検査をしている最中。職員と布切れ一枚の仕切りで、評判の良い上司を愛でているなんて誰も知らない。膝立ちしている脚を少し広げ、すでにぐしょぐしょの股間を締めたり緩めたり繰り返した。


 啓介は真奈の頬を両手で触り、ゆっくり彼女を引き離した。まだ終わってないのにと彼を見上げる真奈の目はすでにとろけていた。


「戻れ」


 くすぐったい吐息が耳元を撫でる。戻れる訳ないと思いつつも、真奈は渋々カーテンの隙間から出ていった。


 このような日は必ず仕事終わりに逢瀬を楽しむ。勤務先の、少し離れた公園の駐車場で落ち合うのがお決まり。


 夜間は大通りから少し距離があるせいなのか、人一人見当たらない公園。当然、駐車場も静まり返っている。あるのは一台、啓介の車のみ。わざと退勤時間をずらし彼の横へ駐車する真奈。


『コンコン』


 別にノックなど要らないのに、啓介は毎回律儀にノックする。女の子を車から降りさせないのが彼のポリシーらしい。


 既に助手席を倒し、バスタオルをひろげた上に座る真奈。啓介はワンピースの裾に両手を入れて糸引く下着を膝までずらした。


「まだ何もしてないけど?」


 そう笑うと、啓介は真奈の糸引く始まりをそっと舐め始めた。


「真奈にこんなこと出来るのは俺だけ」


 どうしてそんなに余裕な振りが出来るのと思うが、それも大好きなところ。ただ、今の真奈には前戯なんて要らない。いや、要らないというよりも昼間たっぷりした。焦らされた思いがもう我慢出来ない。


「入れて……」


 今の真奈に言えるのはこれくらい。啓介はすぐに真奈を突き上げた。めちゃくちゃにギシギシするシート、真奈の軽自動車は簡単に大きく揺れてしまう。


「んぅ……」


 下がみちみちと塞がれて、気持ちが良くて声を出したのに上も塞がれる。どちらもびちゃびちゃで自分の感覚が分からない。


 一通り終えると、啓介は真奈をギュッと抱きしめて頭皮の匂いを嗅ぐ。仕事終わりにして欲しくないことではあるが、これがないとダメらしい。


「また明日な」


 啓介はそう言うと自分の車に戻り、お互いにバイバイをして帰路に着く。


 ホテルに行くこともあるが、それは決まって土、日、月曜日の三連休になる土曜日のみ。真奈としても毎回ホテルでは、お金を払ってもらうのも申し訳ないし気軽に会えるという点で気に入っていた。


 上司と、このような日々を繰り返すうちに早半年が過ぎ去った。そろそろ旅行に行きたいなぁと思いながら、更衣室で着替えをしていたある日のこと。古株の看護師さんが入ってきて真奈に話しかけた。


「真奈ちゃん、聞いた?佐藤さん、赤ちゃんもう少しで産まれるそうよ!楽しみねぇ」


 この後続いた言葉は、真奈の耳には全く入って来なかった。


 真奈の想いは終わらず、第二章へと進む。貴重な若さを背徳感と不道徳で潰すことになるとは知らずに。


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