第4話「金策」
人が生活するには金が必要だ。スラムから王侯貴族まで共通のシンプルな決まり、それが金というものだ。
手っ取り早い金策はギャンブルなのだが……
「やりすぎない方がいいよなあ……」
勝ち続けてしまうとルールを守っていようとどうしても怪しまれる。適度に負ける事も必要だ。まあてきとーに賭け事をやっていれば順当に負けるだろう、スキルを使わなければいいだけだ。
そう考えれば金貨を一枚ほど使えばアリバイ作りにはなる。無駄遣いなのは百も承知でカジノへ向かう事にしよう。
食堂で軽く朝食を済ませてカジノに行く。損をするために足を運ぶのはなんとも奇妙な感じがするな……
とりとめもない事を考えていたら王都でもそこそこ大きい公営カジノへ着いた。民営カジノが増えてきたので金になる事に気づいた行政が建てたものだ。
ざわついているカジノの受付に金貨を一枚差し出して換金不可のチップに交換した。一度賭けて普通のチップにしないと換金できないが今回は消費する事自体が目的なので好都合だ。
十枚のチップから一枚をルーレットのゼロに置いた。確認を取られ周囲の人が賭けたのを確認してから回転するルーレットにボールが投入された。クルクル回っているのを眺めていると、つくづくこの手の賭け事が分の悪いものだとわかる。当たるわけ無いだろこんなもの……
ボールの勢いが落ちて、カチャカチャ……カタンと情感のかけらも無い音を立ててポケットに落ちた。
『ゼロ番! ゼロ番に賭けた方はいますか?』
なんと初回で当たってしまった。配当のチップ十六枚を受け取ってどうするか考える。
ま、まあいい……カジノというものは客が負けるようになっている。それにイカサマ無しで勝ったのなら後ろめたい事はない。
次はスロットで金を溶かす事にしよう。こちらは短期間に何度も賭けられるので換金不可のチップ九枚くらいすぐ消えてなくなるだろう。
ちゃんちゃん……かんかん
音を立てながら機械からチップがドンドン出てくる、こんなはずではなかった……もっとダメ人間のように金を消費するのが目的だったのに、換金可能なチップが五十枚を超えてしまった。もういいズルはしていないんだから堂々と換金して帰ろう。
結局、適当に浪費するために持ってきた一枚の金貨が五枚になって帰ってきた。
換金をして、宿に帰ろう……
「またお越しください」
そう言う受付の人からは言外に『次はちゃんと財産をスレよ?』という圧力を感じたのは気のせいだと思いたい。
宿への道中、一人のシスターが教会への寄付を募っていたので金貨を一枚、足元の箱に入れておいた。チラッとお金を入れる時に見えた箱の中には銅貨と数枚の金貨しか見えなかったが、実際金貨は珍しいらしくシスターは腰を曲げて頭を下げていた。
俺は今日、金貨四枚を稼いでその内一枚を寄付した。お金は増えたし自己満足もできたが、心労を考えると結構な手間だけ思った。
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