第27話 癒しのTwitter時間 ⑵
土田からのオフ会のお誘いで、テンション上がりまくっている澪に対し、那知は猜疑心に駆られている。
「他のフォロワーが来なくて、ツッチーとデート状態になれるなら、澪にとっては、願ったり叶ったりなんだろうけど、なんか、引っかかるんだよな~」
那知が今までバイト先で接して来ていた土田の性格から、SNS上で知り合った人々と、オフ会などを軽いノリで計画しそうな感じには思えなかった。
それでも、期末試験終了後の解放感や、少し前の自分達も含めた一騒動からの勢いみたいなものが加わっていた可能性も有り、それならば、那知の杞憂で終わる事もあろうと思われた。
「土田君も、期末試験で頑張った勉強疲れからパアーッと発散したいんだよね~!分かる分かる~!一生懸命に頑張った後のお楽しみとして、趣味の合うフォロワーさんと語り合いたい気分なんだと思う!で、那知、どっちのワンピースがいいと思う?」
浮かれ過ぎて、楽観的な方向にしか頭が回転しない澪。
「そうだな~、こっちの清楚な感じの方が良いと思うよ」
澪のワンピースはどれも、似たような感じで大人しいイメージのものが多いが、その中でも、よりシンプルで目立たない方を選んだ那知。
「そう、こっちなんだ~。地味な方か......うん、そうだよね、初デートだしね!」
「あっ、僕も一緒に付いて行くから、待ってて」
那知の言葉に、土田と2人っきりが良かった澪が、露骨に迷惑そうな顔をした。
「那知は来ないで!第一、フォロワーさんじゃないし、そういうの良くないと思う!」
那知が来ると、今までの経験上、土田が那知の方に注目したり、あまりよろしくない流れになりそうな気がして、猛反対した澪。
「いいのかな~?だって、澪1人だと、方向音痴だから、オアシス館のフードコートまで辿り着けなそうじゃん」
「......確かに、そうかも知れない。やっと、辿り着けた時には、もう解散してたら哀しい......」
そういう面では、しっかり者の那知が一緒の方が頼れて有難いが、澪は土田と2人っきりになりたい願望を捨て切れない。
「単独行動すると、澪はこれまでに迷って間に合わなくなる前科を作り過ぎているからね。僕はフードコートまで、澪を送り届けて、どっか行くから大丈夫だよ」
澪の気持ちを察して、2人の邪魔にならないように心得ている那知。
「うん、そだね~。那知に案内役頼む事にしよっと!......あっ、ただし、女装は無しという事にしてね!取り敢えず、急いで、那知!」
那知に女装して同行されると、土田の気持ちがまた良からぬ方へ揺れ動きそうで、それだけはどうしても避けたかった澪。
「了解!多分、澪より早く用意出来るよ~」
その言葉通り、数分後には着替え終え、もたついてまだ支度中の澪を居間のソファーで仮眠しながら待っていた那知。
「お待たせ~、最近、試験勉強のストレスでムダ食いし過ぎてたから、ワンピース少しきつかったけど、見た感じどう?何ともないかな~?」
澪が姿見の前で、後ろや横からの状態をチェックし出し、那知が短い仮眠から目覚めた。
「うん、まあそれも澪らしくて、僕は気にならないけど~。それよか、早くしないと!バスに間に合わなくなるから!」
「えっ、チャリで行くんじゃないの?」
「殺す気か~?チャリはターミナルまでで、そこに駐輪しておく。その後は高速バスに乗る!もうバスの時間も調べてあるから、急ぐよ、澪」
那知に急かされ、自転車の後部席に横座りした澪。
「那知は、やっぱり段取り良いね~!助かった~、ありがとう!」
この後、土田と2人でランチデートになる事を想像しながら、すっかりご機嫌な澪は、突然、不本意ながらも同行してもらう事になった那知にも、素直にお礼言えるくらいの余裕が有った。
「そんなにデートって決め付けて期待していても、オアシスだったら、この近辺の高速バス停まるし、交通の便はそんな悪くないから、意外とフォロワー集まってるかも。ガッカリしないように、そういう時の覚悟もちゃんとしろよ、澪!」
「うん、分かった!もしも、何人か集まってたとしても、その方が、緊張しないで会話を続けられそうだし......」
試験が終わった解放感と睡眠不足でハイになっていて、那知の言葉に対し、ポジティブ思考でしか返さなかった澪。
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