空が繋がっていてくれるから
ゆりえる
第1話 希望に満ちていたはずの高校生活が......
『一度も姿を見かける事も無く、声が聴こえる事も無く、気付くともう放課後。今日も結局、学校は無意味だった!』
Twitterの鍵付きアカウント【mio】の方で呟いた、
今週月曜日から今日までの3日間、澪のTwitterのホーム画面には、同じツイートが並んでいた。
澪の2年来の片想いの相手である
土田と同じクラスであれば、休んだ理由くらい担任から聞かされそうだが、生憎と別のクラスに澪は在籍していた。
若しくは、土田のクラスに澪の友人の1人でもいると、それとなく聞けたかも知れないが、澪は他のクラスはおろか、同じクラス内でも、新規の友達作りが苦手で、皆成高校入学後、孤立する事が多くなっていた。
せっかくの高校生活、楽しまないと!
......と思う高校生は多いはずだが、澪は、自分の力量以上の高校を選択し、赤点取らずにいるのが精一杯。
友達がいたとしても、そもそも同級生と放課後や休日に遊ぶ心の余裕などは全く無い現状だった。
(こんなはずじゃなかったんだけどな......)
澪は中学2年生の時点までは、成績が中の下だった友人と5人で、学力に見合う四橋高校へ入学し、楽しい高校生活を送る事を期待していた。
実際、澪以外の4人は、当初の予定通り四橋高校へ進み、花の高校生活を実現している。
そして、土壇場で仲良しグループから1人勝手に外れた澪を、彼女達はもはや仲間とは見なさず、連絡すら絶っていた。
その地域で最難関である皆成高校へ何とか合格した澪は、周りには仲良し1人いない違和感しか無い環境で、花の高校生活どころか、ひたすら学業にのみ励む日々を過ごしていた。
それもひとえに、初恋の君である、土田空に少しでも近付きたいという一途な恋心ゆえだった。
帰宅部の澪は、土田のいない学校に、何の未練も残さず直帰した。
帰宅後、まずは、パソコンを立ち上げた。
これは澪にとって1番大事な日課だった。
パソコンが立ち上がるまでの間、セーラー服を脱いで室内着に着替えようとすると、室内着にしているコットンのワンピースが無い事に気付いた。
コットンのワンピースは、洗い替えも含め5着も有るのだが、1~2着は洗濯をして干されているとしても、他のワンピースまで見当たらないのはおかしい!
母が間違えて、弟の
すぐ那知の部屋からワンピースの回収をしたかったが、澪の生活は、あくまでもパソコンが最優先される。
パソコンが起動するまでの間、明日の時間割をチェックし、教材を入れ替えた。
そうしている間にやっとパソコンが起動し、早速、Twitterの画面を開いた。
今度は【mio】というアカウント名ではなく、澪のもう1つの【mokk】という鍵が付いてないアカウントの方で。
すると、約3日ぶりに通知欄に【クモノスケ】の名前が有るのを見て、小躍りした澪。
『やっと親戚の法事終了。愛媛にて、環水平アーク』
雨上がりの虹とは反対向きに反りかえった美しい虹が、太陽の上空の位置に見えている写真をアップしていた【クモノスケ】。
そのツイートに対し、早速『いいね』を押した【mokk】。
3日間もわけが分からないまま土田の安否を気にしていた澪は、3日間休んでいた原因が親戚の法事のせいだったと知り、胸を撫で下ろした。
【クモノスケ】は、Twitterでの土田のアカウント名。
高校入りたての頃、友人達と歩いていた土田のすぐ後ろを偶然の如くピッタリと澪が死守し、やっと仕入れたのが、このTwitterのアカウント名だった!
(やった~!大収穫!)
帰宅するや否や、Twitterなど縁の無い生活をしてきた機械音痴の澪が、その道では頼れる先輩である那知から、Twitterの登録方法を教わり、即、土田のアカウントをフォローした。
土田は、【クモノスケ】というアカウント名からも分かるように、ほぼ毎回の如く雲の写真をアップしていた。
土田がアップしていた雲の写真は、よくありがちな雲ではなく、少し珍しい形状のものが多い。
虹色に見える彩雲を好んでいるらしい土田は、そういう雲を見かけた時には、執拗に何度もツイートし、その興奮ぶりがTwitterからも伝わって来た。
澪自身は、元々、特に雲には関心が無かったが、大好きな土田の趣味の世界を自分も共有したいと思い、雲を逆から読んだ「もく」から自分のユーザー名を【mokk】にし、空を見上げる事が増え、土田に負けじと珍しそうな形の雲をTwitterにアップした。
【クモノスケ】の全てツイートにしつこいくらいに欠かさず『いいね』を表示し、やっと土田と相互フォロー達成したのが、1ヵ月前の9月6日。
やっと念願が叶っての相互フォローを達成したその日は、澪にとって大事な『第一次接近記念日』となった。
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