第38話 拠点作り0

-side エリク-



 セシルと、エリーゼがいなくなった部屋では、異様な空気が流れていた。その変な空気を作った元凶--レオンが口火を切る。



『迂闊だった。まさか、エリクが行っていた諸々の活動が、ここまでの影響力を持っているなんて』

「俺は、普通に生活していただけなのだが?なんか問題でもあるのか?」

『あるよ。ある。エリクにこのまま普通に生活されたら、問題大アリだよ!』

「何が?」

『周辺国が、エリクに頼らずに、マスク王国を潰したとすると、魔王は、味方がいなくなって、普通に強いレベルの冒険者でも協力すれば、討伐できるレベルの強さになるはずだ』

「それは……、世界にとっては、良いことではないのか?勇者1人に頼る世界というのは良くない事だろう」

『確かにそうだけどね。問題はここからだよ。世界が、勇者を世界が頼らなくなる。……って事は、エリクはこの世界の英雄でもなくなる。……って事は、このままでは無双ルートが!!ハーレムルートが!!』

「なんだそんな事か。というか、まだ言ってたのかそんな事。どう考えても、この流れはスローライフルートだろ?このルートは。そんな事で、俺の時間を無駄にしないでくれ」

『そんな事!?そんな事じゃないよ?全く……。いっそ、この世界のことを壊して、もう一度、作り直すか。--はめつのひ……」



 レオンの周りに、得体の知れない神々しいが集まる。それを、トールが慌てて、握りつぶした。



「まあ、待て。レオン」

『ん?どうしたのトール。今いいところなんだけど。話なら、後にして』

「もしお主が、破滅の光で、この世界破壊したら、我はエリクと、後で話ができんのう。それはそれとして、その大技は其方にも、代償があるだろう?」

『う……』

「それに其方が言う、無双ルート?やハーレムルート?とやらの希望はまだ、途絶えたわけではあるまい?」

『え?本当?』



 思わず、身を乗り出して、答えを求めたレオンの圧に若干ひきながらもトールは答える。

 エリクはやれやれと言った様子だ。



「う、うむ。まあ、なんだ。敵情視察がてらちょいちょいっと、マスク王国へと遊びに行った時、風の噂で聞いたのだが、エリクはどうやら、この世界では英雄扱いされておるらしい。多くの民を豊かにし、知恵を分け与え、さらには故郷の領民を救った英雄だと」

『ほう、ほう。確かに、それは私も聞いた事がある。敵の様子を見にちょいちょいっと、マスク王国に遊びに行った時に』



「お前らが一番、敵の事を馬鹿にしてないか?」--とエリクは思ったが、黙っておく。



「ふむ。して、そんな英雄に相応しい城をこの最強国家、エリクシアに建ててみろ。無双もハーレムも簡単だろうて」

『確かに。言われてみれば、でっかい城を建てたら、そこに住んでる主人は敬われているはずだよね。確かに無双もハーレムも簡単そう。うん……よし、そうと決まれば、拠点作りだね!私も手伝うよ』

「何か、そこはかとなく嫌な予感がするんだが?そもそも、仕事とプライベートが充実しすぎてて、かつ出会いもなければハーレムは起きないし、強大な敵がいなければ無双もできないのだが?」

「そこは、ほら。気にするでない」

「一番気にするところだろ。そこは。明らかに根本的な原因無視して、上辺だけの解決に逃げようとしているのが、見え見えだ」

「う……、しかしだな。この事は、エリクにとっては、これは良い事だと思うのだ。どうせ、このまま、上辺だけの対処をレオンがし続けてくれれば、レオンは無駄なルートに、半ば強制的に入ることもないだろう?」

「た、確かに」

「つまりそう言う事だ」

「……まあ、今日のところは一旦引くよ。城に変なギミック入れなかったらの話だが」

「……そこは、あれだな。我の力ではどうしようもできない。すまぬ」

「……」



 上手く丸め込まれた気がしなくもないが、新しい城を作る際は、出来るだけ深く関与しようと決めたエリクであった。



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