第8話 操作感度
-side エリク-
モニターには上から見下ろす形で屋敷が映っているので、プロコンを構えて操縦する。ゴゴゴゴゴゴゴ……と音がして、建物が浮く。右や左に動かすと、その方向に建物が動いた。
「うわっ。浮いてるじゃん。マジで動いた」
「うむ。だからそういっとるだろう」
本当にプロコンで操作できるみたいだ。やはり、腐っても神は神なのかも知れない。
「ふむ。ちょっと動きが重すぎなような気も」
『そういう時は感度を変えられるよ』
いきなり、レオンが後ろから現れた。
「……って。うわ!レオン……様?」
『レオンでいいよ』
「お主……。出どころを考えろ。出どころを」
『あはは。いきなりごめん。さっきはホログラムで現れてたんだけど、それだと味気ないからさ。実体化して現れることにしたんだよね』
「そんなことできるのか?」
『うん。時間制限はあるけどね。100年くらいかな』
「ほー。だから、お主は死んだふりを」
『そーいうこと。前回使ったのは2000年くらい前だっけ?』
「うむ。そうと分かっていれば、中に入るのを次の復活まで待っていたのだがな」
『いやー。ほら、君ってば私が加護与えてるだろ』
「ああ。そういえば、そういうことになるのだな(ありがたみが失せる)」
『どーせ知ると、ありがたみ失せるなとか思うだろうから黙ってたのさ」
「(ぎくりっ)」
「……ってお主、まさかそんな理由で」
『まさかとはなんだ、まさかとは。大事なことだろうが』
「((あ、開き直った))」
『ま、まあ。それはともかく(汗)』
「((あ、話そらした))」
『べ、べ、別に話そらしているわけではなく、まじめに、うん真面目に』
「((わ、わかりやすい))」
さっきからエリクとトールが考えていることは全部レオンに筒抜けである。
しかし、普段は対人関係などを有利にする能力であっても、圧倒的に自分が悪いともなると、何も言い返せないでただただ相手からの正論パンチを喰らうという悲しみの能力に変わるのであった。
「(というか、実体化できるのなら自分で魔王を倒しに行けばいいのではないかとも思う)」
『いやー。ごもっともなんだけどね。やっぱり君が倒した方がこちら側としても、都合がいいというか。簡単に魔王を倒したら、面白くないというか。魔王や邪神を倒すのがそろそろ飽きてきたというか』
本音ダダ漏れである。
ジトーー。という目でエリクとトールが見ていると、『えーと、だから、あ、操作感度の話だった。ここをこうして、こう。これで操作してごらん』と、必死に話を逸らそうとした創造神が本来の目的を思い出し、本題に戻す。
結局この神は話す必要もない世間話をしてボロが出たせいで、勝手に自爆しただけであった。神とて万能ではないのかもしれないという出来事であると言える。
「ああ。おー。確かに、動きが少し軽くて、操作が少ししやすくなった気がする」
『うん。ただ、この屋敷は屋敷にいる生物の魔力を溜めて、審判の光や破滅の光などを放てるんだけど、感度が高いとその時に、aimが少しブレやすくなるから気をつけて。魔王を狙ってたのに、うっかり人の町破壊しちゃいましたってことにならないように』
「え?そもそも、そんな機能いらないんだけど」
『そうつれないこと言わずに。きみが、これから魔王を倒せるようにするために、わざわざ俺が付け加えたんだ。ちなみに、他にも色々な機能があって大抵のことはできるから、必要に応じて聞いてくれると助かる。
なんだったら、その場で新しい機能付け加えるからさ』
「まあ……、もらっといて損はないか?」
普通だったら、この時点で怖くてプロコンの操作を放り投げるところだが、エリクは図太いから気にしないだろうと創造神レオンは考え、見事に的中した。
計算高い傍迷惑な神でもある。そこから、しばらく屋敷の操作の練習をした。
『さて。今日はみんな疲れたでしょ。暗号が解かれたから、外敵に入られやすくなったけど、僕がこの場所を守っているから、今日は帰ってもいいよ』
「わかった。あ、そういえば、俺もここに住んでいい感じ?」
『もちろん』
「エリクをレオンと一緒にするとか、不安でしかないのだが」
『やだなあ。俺がいつ君を不安にさせたんだい?』
「無自覚なのが、1番怖いところだな」
「(どうやら、レオンは相当やばいらしい。まあ、どうにかなると思うが)」
安定の謎の自信である。
「ともかく今日はアトラニア王国に一旦戻らないといけないから。ここで、一旦さよならだね」
「うむ。我も竜の杖を里に戻さないといけないからな」
『あー。そういえば、そんなのあったね。長いこと借りててごめん』
「いいってことよ。それより調べられたか」
『ああ。ほら』
レオンは亜空間から竜の杖そっくりの道具を取り出した。
『エリクにも同じものあげるよ。再現できたし。それ結構便利なものだからね』
「お、おう」
秘宝である竜の杖を再現して、結構便利だよと言って気軽に渡したことに対し、流石のエリクもドン引きである。トールが心配したのはこういうとこであった。
そんなこんなで、エリクとトールは一旦竜の里に戻ることにした。
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