第6話 屋敷の暗号
-side エリク-
昨日は結局トールの頭の上で、爆睡してしまったので、エリクはそのあとのことを全く知らないが、どうやらトールが部屋に運んでくれたようだということはわかった。お陰で、エリクは最高品質のベッドを堪能し忘れたと後悔していたが自業自得だろう。
この状況で起きた時の第一声が、「ああーー!高級ベット堪能し忘れたっ。ちくしょーー」だったことに対して、介護をしてくれていたドラゴンは呆れを通り越してドン引きしていた。
そんなことがあって朝は白けた雰囲気だったが、時は過ぎ、今は昼食をトールとルカと一緒に応接室で取っている。
ルカは使用人だと聞かされていたが、実質ここの管理を任されている責任者で、侯爵でもあるそうだ。
トールは次期竜王らしい。
竜王は竜神からの信託によって決まるらしく、加護を与えられるため、その代で1番強くなるのだそうだ。
やはり、めっちゃすごかった。
今の竜王が亡くなり次第、竜王となるようだ。もっとも、後数千年後の話だという。
流石ドラゴン。スケールが違う。
「さて、トール様があなたをここに連れて来たのは訳があります。あなたを気に入ったということもありますが、それだけではありません」
「(それはそうだ。なんのメリットもなく、ここまでの厚遇はないだろう)」
エリクも頷く。
「実は、人族の英雄レオン殿の館からドラゴンに伝わるという秘宝を取ってきてほしいのです」
「やはり、さっき遠くに見えたのは人族の屋敷でしたか。それも英雄の。しかし、何故そこにドラゴンの秘宝が」
「そうです。昔レオン殿に竜神様から頂いた竜の杖という神器を調べたいと頼まれたのです。
大したものでもないので、渡していたのですが、返してもらう前に死んでしまいまして」
「ん……?どうして、自分たちで取りに行けなかったんです?小さくなって中に入れますよね?」
エンシェントドラゴンが姿を縮小して人間サイズになることができるということは御伽噺では有名だった。
「もちろん、姿を小さくすることぐらいは容易くできます。しかし実は暗号ロックがかかっていまして。暗号を解読できればよかったのですが、無理だったのです。
同じ人族であるエリク殿ならなんとかなるだろうと、お願いした次第であります。もちろん、報酬はお渡しいたします。
暗号が解けた暁には最低限、神器以外のレオン殿の所有物全部と、衣食住を無償で提供しましょう。解けなくても、請け負ってくれるだけで、最低限ここでの安全は約束しましょう。どうでしょうか?」
「(解けたら神器以外の英雄の持ち物全部と衣食住が何もしなくても提供される。それを差し引いても参加するだけで安全を約束してもらえる。破格の待遇だろう)わかりました」
「交渉成立ですね。早速この後お願いします。
解けなくても、責めないので大丈夫ですよ。あの方の作る暗号はとても難しいですから」
「そうだな。なんせここにいる全員が解けなかったのだからな。まあ、お主が解けなくても我々が文句を言える筋合いはないってことよ」
そんな感じで、エリクに依頼が来た。
「(というか、これは依頼っていうより俺が何もせずここにいたら居心地が悪いだろうと思って気を使われたかな)」
「ガッハッハ。やはり、お主は賢いのう。これは、本当に暗号を解いてくれそうだな」
「(やっぱり。なんやかんやみんな優しいようだ)……期待に答えられるように全力で頑張りたいと思います」
「うむ。頼んだぞ」
こうして、エリクは依頼を受け、ご飯を食べ終わるとトールに乗って屋敷の前まできた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
屋敷はとても綺麗だった。
英雄レオンと言ったら、数千年も前の人だと聞いていたが、本当に数千年経っているのかと思わされるほどに。
トールが目の前にきて、手をかざすと暗号が浮かび上がる。
そこに書いてあったのは--。
『これを見ている日本人転生者の人、ようこそ!ここにきたということは、スローライフスタイルの世界でハッピーエンドルートもバッドエンドルートも選ばなかった、超変わり者だね!そんな、変わり者の君にこの世界を満喫するスペシャルなものを用意したよ!
このドアに向かって“ひらけゴマ”と唱えてね。きっと、これからの人生が楽しくなるよ。
創造神レオンハルト』
というふうに日本語で書いてあった。
「(…………。ほおおおーーー?これは、一体どういうことだ。レオンは英雄じゃなく、創造神だったと。創造神がSSランクの冒険者なんてありなのか?
いや、まあ、実際ここに書いてあることは事実なのだろうということはなんとなくわかるが。なんか、知識神ルノウが使ってた神力みたいなのを感じるし。
というか、暗号って日本語で書いてあるから誰も解けなかったのか。そんでもって竜神の神器借りたままなのに、次の転生者が来るまで開けられないようにしたと……。
前回の知識神と生命神といい、今回の創造神といい傍めいわ……。いや、やめよう。変な記憶思い出しそうだ。)」
「……?どうした?エリク?真剣な顔して。」
「いや、まあ、暗号は解けたんだ」
「おお!よかった、では!」
「ああ、まあ、それ自体は良いんでけど。わからないことが多くってね」
「ふむ?どういうことだ」
「うーん、口で説明するのも難しいし、とりあえず中を見てから考えることにする」
「うむ。それが良い。我も神器が戻ることが優先だ」
「じゃあ、行くよ。“ひらけーゴマ!”」
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