マリーゴールドの散る頃に

厨二病の熊

第1話-家出の先-

〈不幸の先には幸せ〉 

 私は不幸の先には幸せが待っていると信じている。だから今日もどんなに辛いことがあろうと生きるのだ。生きていればどうにかなる。その言葉を教えてくれたのは誰かは分からない。だけど、その言葉をどうしても信じたいと思ってしまう。

 

 母が眠りについた頃、一人街を走り出す。周囲からは恐ろしいほどの視線を浴びる。私はそのようなことを考える暇さえも無かったからだ。


 「あの家から逃げなければ!」


 そう心にあったのだ。息を切らしながら無我夢中で走る私は見ず知らずのおじさんにぶつかってしまった。おじさんの頬は赤く、服からはとてつもない酒の匂いが漂ってきた。匂いだけで酔っ払いと判断できるほどであった。私はぶつかった衝撃と共に足を捻らせそのまま前へと倒れかけたが、一人の男性が私を支えてくださり、ギリギリで私は助かった。だが、おじさんは酔っ払っているせいか、私の目の前へと立つと腹を蹴ってきた。私は腹を抱え地面へとしゃがみこんだ。そんな私をみて味をしめたのか日頃のストレスを発散し始めた。ブツブツと名前を言うたびに私の体を蹴る。元々ある痣に当たり、とても痛い。私は泣き出しそうになった。そんな私の背後にとても大きな影ができ、それと共に顔を上げると先程の男性が立っていた。そして男性は言った。


 「そのガキ蹴るなら俺が相手する。」


 男性は私を庇ってくれたのだ。学校では虐めを受ける私を見て皆見て見ぬ振りをするのだ。それは自分まで巻き込まれたくないからだ。だから今まで一人で耐えてきた。そんな私を庇う人などこの世界にいない。この世界に存在しないものだと思っていた。私は涙が頬に落ちた。次から次へと流れ落ちる。そして周りには人だかりが出来ており、おじさんも焦ったのか逃げようとした。だが、男性に引き止められたおじさんは暴れ始め、ついには鞄からハサミを出した。周りからは悲鳴が聞こえる。私たちの周りは人がいなくなり、遠くから見ている人たちが大半だった。おじさんは泣きながら言った。


 「努力はいつか報われる。そんな言葉嘘だ。今の俺が実際にそれだ。どれだけ変わろうと努力した所で何も変わらなかった。嫁にも捨てられた俺にはもう何も残っていない。」


 そう言うと手に持っていたハサミを自分の首へと向けた。おじさんは涙を流していた。溢れるほどの涙だ。拭ききれないほどの涙だ。その光景に私は見覚えがあった。だからこそ私はおじさんに言える。


「私も同じです。どれだけ努力をしても変わらなかった。変わらなかったと言うのは虐めです。今も虐めを受けてます。周りの人たちは見て見ぬふりをします。それはきっと自分が標的にされたくないからだと分かります。だけど、辛くなった時はこの世をさろうか悩みます。だけど私。信じているんです。例え今が不幸だとしても、不幸の先には必ず幸せがあると言うことを。だから、おじさんも信じて見ませんか?もう一度私と一緒に信じて見ませんか?」


 私はそう言うと少しずつ立ち上がり、おじさんの元へ行くと首に向けられているハサミを下げた。そしておじさんは少し笑ったような気がした。私が喋ろうとした時警察が到着した。周りにいる人たちが通報したのだろう。おじさんは殺人未遂で連呼されていった。だがおじさんはパトカーの中で最後に言った。


 「信じるよ。」


 その一言言い残すとパトカーは動き出し、警察署へと向かっていった。私と男性は今までの敬意を話し、警察の方々は先程パトカーで警察署に向かっていった方々の跡を追いすぐに行ってしまった。私の心は少し軽くなった。それと共に緊張が解けたのか、今までの痛みが一気に押し寄せ気絶した。真っ暗だ。暗闇だ。まるでいつもの部屋だ。私、帰ってきちゃったのかな。体が動く。そして私は徐々に目を開いた。恐る恐る開いた先はいつもと違った。天井が見え暗く無い。そして声が聞こえてきた。


 「目覚めた?」


 その声は紛れもなく私のことを助けてくれた男性だった。ここに男性がいると言うことは、この部屋は男性の部屋だとすぐに分かった。またもやこの方に助けられてしまった。私はこの借りをどう返せば良いのかがあまりよくわからない。だが、私の何かが一つ散った気がした。

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