夜遊び
悠君と顔を合わせたくないから、思いきって京ちゃんを夜遊びに誘ったら、そのまま京ちゃんちにお泊まりさせてもらえることになった。
「佐野君となんかあった?」
心配してくれた京ちゃんに、
「そんなんじゃなくて……ママのいない隙に実はちょっとだけ遊んでみたいと思ってたんだ」
そう言ったら、素直に信じてくれてちょっとだけ苦しくなった。
でも京ちゃんもちょうどタカヤ君と喧嘩していたらしい。
放課後デートの約束をしてたのに連絡は取れないし、やっと電話に出たと思ったら寝てたんだよあのバカ! って怒り狂ってた。
高校生と大学生とじゃ確かに生活リズムが全然違うんだろう。でもだからってデートをないがしろにされたら喧嘩になって当然だよ。
そんなわけで女子だけの夜デートは盛り上がりそうな雰囲気に。
一度帰宅して準備をすると、荷物を持って駅で待ち合わせた。実は気になって何度もスマホをチェックしてたけど、悠君から連絡が入る気配がまったくないから、もうあきらめた。
ほらね、やっぱり悠君は釣った魚に餌をやらないタイプだったんだ。ずっと疑惑はあったけど、これでほぼ確定。こっちから連絡する必要もない。
怒りの勢いに任せて、私達はちょっと冒険してみることにした。クラブとかじゃなくて、もっと大人の場所に行ってみようって。
思いきって女子大生の京ちゃんのお姉さんに声をかけてみた。そしたら、最近お気に入りの夜カフェに連れてってあげるって言ってくれたから、それに付いていくことになった。
「夜カフェってなに? なんか響きが大人じゃない?」
「ねー、楽しみ! 年上のお兄さんにナンパされたらどーしよ!」
お姉さんの
「昼と夜とでそんなに違うんだ?」
お昼に一度行ったことがあるらしい京ちゃんもビックリして雅ちゃんに聞き返してた。
「そうそう、行けばわかるよ。彼氏なしのうちらのグループなんか週2で通ってるくらいだもんね」
雅ちゃんがすごく楽しそうに話すから、俄然ワクワクしてきちゃった。
「実はそこのピアノ王子のなかの1人がめちゃめちゃタイプなんだ」
「げー! ピアノ弾く人のいるお店なの?」
びっくりだ。そんなお店行ったことがない。雅ちゃんは眼鏡男子に目がないらしくて、その人目当てで行ってるようなものらしい。黒髪がまたそそるんだって。
「ねぇ、そういう男子って音大の人なのかな?」
「わかんないけど絶対彼女いるよね~」
「いるいる。しかもみんな気軽に声かけられない感じのオーラがすごいんだよね」
「ドライアイが潤うだけかー」
「まさにあれが高嶺の花男君てやつなの!」
「いやいや、ひるまないでガツガツ行くべきでしょそこは! お姉ちゃん頑張んなよ!」
「そんな簡単にはいかないよ。ハードルめっちゃ高いんだからね?」
行きの電車のなかでのわちゃわちゃからもう楽しい。悠君のことなんか、今夜は忘れちゃうんだもんね。
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